研究課題/領域番号 |
16K00549
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研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
橋本 光正 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (70293975)
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研究分担者 |
奥田 光一 金沢医科大学, 一般教育機構, 講師 (60639938)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNA損傷 / DNA修復 / アポトーシス死 / X戦 / ATM / 53BP1 / 細胞周期チェックポイント / アクチン重合各課因子 |
研究実績の概要 |
本研究は、DNA損傷部位に集積する53BP1のフォーカスの数、形態、容積を指標に、運命の決定を下す時期と運命を決定づける要因(DNA損傷数、損傷の質、損傷を受けた細胞周期)を明らかにすることを目的としている。 まず、私たちは、72~96時間の範囲が細胞の修復完了かアポトーシス死かの分枝点であることを見出した。そこでこの範囲に着目して、アポトーシス志向細胞について調べ、(1)DNA損傷が増加すること、(2)残存ATMの脱リン酸化が起こること、(3)ミトコンドリア膜電位が不安定化すること、(4)核膜構造が脆弱化すること、(5) BrdUの取り込みで調べたところ、24~72時間の範囲でBrdUの取り込みが多い細胞は、上述したアポトーシス志向細胞の特徴を見いだすことができた。BrdUの取り込みが少ない細胞は、その逆に生存志向細胞の特徴を見いだすことができた。次に生存志向細胞について調べたところ、(6)細胞周期チェックポイント機構が強く機能し、G2期停止時間が長いこと、(7)G1期停止時間には依存しないこと、(8)S期停止時間は長くなること、(9)ミトコンドリア膜電位が高い値で安定化した後、96時間を目処に急激に低下すること、を見出した。(10)またATM、53BP1を免疫染色したところ、X線照射後72~96時間の範囲で残存するフォーカスは比較的短時間にある様なものと異なり、エリアが大きかった。(11)次にATM阻害剤を添加した後、X線照射し、0~96時間における細胞の挙動を調べた。結果として上述のS期におけるDNA合成が有意に変化し、X線照射後も合成が完全に遮断されることが無くなり、合成がDNA含有量で見るとG2期まで達した。そしてその後、アポトーシス死する細胞の割合が著しく増加した。(12)アクチン関連タンパク質については有意なアポトーシス死について差を認めることはできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
X線によるDNA損傷を与えてから、細胞死に至る過程の動画データの解析に、想定以上の時間が必要であった。また本研究課題の現象解析に一番使用頻度の高かったフローサイトメトリーの故障により、その実験データを取得するのに時間を必要とした。また得られた結果から仮説モデルを再構築することで、実験計画を追加した。ATM阻害剤についての実験は終了しているが、DNA-PK阻害剤についても検討を要すると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
アクチン上流分子Arp2/3、WASPのX線照射における変化を定量的に明らかにする。 Arp2/3、WASPについて、蛍光免疫染色を行い、細胞周期毎の蛍光強度と形態変化を定量する。さらに細胞周期毎にX線照射を行い、同様に経時的に蛍光強度と形態変化を定量する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅れによって生じた。残金は研究成果の発表、論文出版、英文校正の費用とする予定である。
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