研究実績の概要 |
当該年度は、クラスターDNA損傷の一種である、2本鎖切断(DSB)の形状と修復関連タンパクであるKuとの親和性評価を中心に行った。まずは、既知のDSB構造をもつ人工オリゴDNA(50mer程度)を基質にして調べた。dsb構造は、平滑末端にものをコントロールとして、5'突出末端(4, 7, 10, 20塩基)、及び、チミングルコール損傷(Tg)を末端から6塩基離れた場所に入れたもの、とした。Kuとの親和性を調べた結果、20塩基突出末端のもの以外は平滑末端と殆ど同じ親和性で結合することが分かった。TgはDNAの外側にFlip outしやすいと思われ、Ku結合を阻害するのではと期待したが、そうはならなかった。DSB末端の形状や損傷の程度はKuの親和性に大きな影響を及ぼさないのかもしれない。 また、放射線で生じたDSBの末端構造の研究を進めるべく、放射線照射したpUC19(form I, II, III を含む)からDSBをもつ断片(formIII)を大量に分取する方法を確立した。様々な方法を試したが、最終的には、①アガロース電気泳動、②pUC19/SmaIマーカーのバンドを頼りにform IIIが含まれるゲルを切り出す、③電気溶出によりform IIIをゲルから出す、④ form III溶液を限外ろ過濃縮・buffer交換というプロトコルになった。簡便ではあるが、低線量ではどうしてもform Iの混入が避けられない。このプロトコルを2回行うことでpurityは上がるが、回収率が激減するリスクを伴う。form Iが多少混入した状態で今後の評価が可能か、これから検討していきたい。
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