研究課題
当該年度は、これまで行ってきたFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)による放射線DNA損傷の局在性評価について、追加データをとるための照射、分析実験、及び解析を行った。FRETの大きさは、我々がすでに報告した同種蛍光分子間で生じるFRET(homo-FRET)を活用し(Akamatsu, K., Anal.Biochem.536 (2017) 78-89)、蛍光異方性<r>を測定することによって求めた。照射試料はこれまでと同じく、pUC19プラスミドDNA(細胞内模擬条件下(~10mg/mL 0.2M TrisHCl(pH 7.5))で照射)を用いた。また、用いる重粒子線に関して、これまでのヘリウム、炭素、鉄イオンに加えて、それらよりさらにLET(線エネルギー付与)が高いネオン、アルゴンを利用できるようになったので、これらによる実験も行った。各々一回しか照射実験ができていないが、従来のヘリウム、炭素、鉄イオンと比較して、損傷の局在性が高いことを示唆する結果が得られた。今後さらに追試等を行い、結果をまとめて論文化する予定である。また、前年度から進めている複雑DSB(クラスター損傷の一種で、二本鎖切断部位の近傍にさらに別の損傷があるような損傷)のFRETによる分析を行うため、プラスミドの放射線照射によって生じたform IIIの分取を行った。さらに、クラスターDNA損傷(損傷が局在化した部位)の可視化を目指して、全反射照明蛍光顕微鏡TIRFの自作を始めた。概ね組み上げることができた。
3: やや遅れている
プラスミドDNAを用いたFRET法によるクラスターDNA損傷の評価は、概ね予定通りに進んでいるが、当該年度よりこれまでよりLETが高いネオン、アルゴンイオンビームの利用が可能になったので、これらの実験を新規に始めた。また、細胞内ゲノムに生じたクラスター損傷の可視化については、それに必要なTIRFの立ち上げを進めている。
・ネオン、アルゴンイオンビームによって生じるDNA損傷の局在性をFRET法で調べ結果をまとめる。・クラスター損傷の一種である複雑DSBの特徴をFRET法を活用して調べる。・TIRFの立ち上げを完了し、DNA中のクラスター損傷を可視化する方法を確立する。
TIRFに関して予定より部品の組立調整に時間がかかった。次年度にかけて立ち上げを行う。次年度にDNAオリゴマー及び放射線照射DNAを用いて、TIRFでのDNA損傷の可視化を行う予定である。使用予定額の内訳は、DNAオリゴマー:50万円、試薬類:32万円、出張費(照射実験、6回):30万円、学会旅費・参加費:10万円である。
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International Journal of Molecular Sciences
巻: 21 ページ: 1701(1-13)
10.3390/ijms21051701