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2021 年度 実施状況報告書

難修復性DNA損傷の細胞内可視化を目的とした光物理化学研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K00551
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

赤松 憲  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, グループリーダー (70360401)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2023-03-31
キーワードFRET / 蛍光異方性 / クラスターDNA損傷
研究実績の概要

R3年度は、原子間力顕微鏡(AFM)によるDNA損傷観察技術を用いた、損傷の種類ごとの細胞内修復性速度を調べた結果について国際誌に発表した(Nakano, T., Akamatsu, K., et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 119 (2022) e2119132119)。修復速度が極めて遅い損傷形態が、「DNA二本鎖切断(DSB)末端の近傍にさらに別の損傷が複数個存在するような場合(複雑なDSB末端)」であることが明らかとなった。この成果は、細胞内で生じたDNA損傷をナノメートルオーダーで観察し、さらに修復速度まで追跡した世界初の報告であり上記有名雑誌のみならず新聞等にも掲載された(3/30京都新聞朝刊27頁など)。申請者がリーダーを務めるグループでは、様々なDNA損傷の検出及び可視化技術を開発し細胞中におけるDNA修復の様子を可視化することを目標に研究を行っているが、本成果はその一環である。
R3年度の本申請課題の実績としては、重イオン照射施設(TIARA)での照射実験を引き続き行い、申請者が技術開発を行ってきたフェルスター共鳴エネルギー移動法(FRET法) (Akamatsu, K., et. al., Anal.Bioanal.Chem. 413 (2021) 1185-92など4報)によるDNA損傷局在性評価を行ってきた。各線質のデータ再現性も得られ論文化を進めている。さらに、冒頭の成果で“複雑なDSB末端”が修復困難な損傷の実態であることが明らかになったので、なぜそれが修復されにくいか、その原因を調べるための研究を開始した。具体的には、修復過程のひとつである非相同末端結合では、DSB末端に結合するKuタンパク質と“複雑なDSB末端”の親和性が重要と考え、FRET法や生化学的手段を用いて探求を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

R2年度に引き続き、細胞模擬条件下(0.2 M Tris buffer溶液。ラジカル消去能が細胞内のそれに相当)における各種線質(He, C, Arイオン)によるDNA損傷局在性評価を進めた。FRET法による評価データは、実験の再現性も十分とみなせる状況になったので論文化を進めている。さらに、本研究課題の目標のひとつである「ゲノムに生じたクラスター損傷の1分子レベルでの蛍光可視化」については、R2年度から全反射照明顕微鏡(TIRF)を自作で開発を進めている。しかしながら、TIRF作製に急遽必要になった高分解能対物レンズ(100万円程度)の購入資金がなく進捗が滞っていた。幸い、R3年11月に機構内競争的予算を獲得し入手することができたので引き続き開発を進めている。一方、クラスターDNA損傷 の一種である複雑DSBの構造と修復性について、修復関連タンパク質のひとつであるKuを用いて、モデルDSBとの親和性評価実験をR2年度より始めたが、特に高LET放射線で、KuがDSB末端に共有結合している可能性を示すデータを得ている。

今後の研究の推進方策

・細胞模擬条件下で生じるDNA損傷の局在性について、重粒子線の結果について再現性が十分得られたので論文にまとめる。
・DNAと相互作用するタンパク質が、DNA脱塩基損傷のひとつであるラクトン型損傷と共有結合するという報告があるので、ラクトン型損傷を有するモデルDSB末端を人工的に合成し、Kuとの共有結合性を明らかにする。 さらに重粒子等でラクトン型損傷が生成しやすいかどうかについても検証を進める。
・高分解能対物レンズが入手できたのでTIRFの開発を引き続き進める。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍による航空便減便の影響により消耗品(輸入品)の年度内納入が困難になったため。
使用計画:DNA精製キット(1セット)、60千円

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Formation of clustered DNA damage in vivo upon irradiation with ionizing radiation: Visualization and analysis with atomic force microscopy2022

    • 著者名/発表者名
      Toshiaki Nakano, Ken Akamatsu, Masataka Tsuda, Ayane Tujimoto, Ryoichi Hirayama, Takeshi Hiromoto, Taro Tamada, Hiroshi Ide, Naoya Shikazono
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America

      巻: 119 ページ: e2119132119

    • DOI

      10.1073/pnas.2119132119

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 放射線照射したプラスミドDNAに生じたクラスター損傷のFRET分析―乾燥及び細胞模擬条件下での比較2021

    • 著者名/発表者名
      赤松 憲、鹿園直哉
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第64回大会

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公開日: 2022-12-28  

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