研究課題/領域番号 |
16K00559
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研究機関 | 日本薬科大学 |
研究代表者 |
北村 繁幸 日本薬科大学, 薬学部, 客員教授 (40136057)
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研究分担者 |
佐能 正剛 広島大学, 医歯薬保健学研究科(薬), 助教 (00552267)
清水 良 広島国際大学, 薬学部, 助教 (00570491)
杉原 数美 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20271067)
藤本 成明 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (40243612)
渡部 容子 日本薬科大学, 薬学部, 助教 (60628056)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 生活関連化学物質 / 核内受容体 / 内分泌撹乱 / 殺菌料パラベン / 紫外線吸収剤 / リン系難燃剤 / 残留性農薬 / 代謝的活性化 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、28年度に引き続き、生活用品に含まれる化学物質を取り上げ、核内受容体に対する活性を中心に検討した。 生活に密着した生活用品に化学物質が加えられることが多くなってきた。このような化学物質には、殺菌剤、着色料、着香料、柔軟剤、可塑剤、紫外線吸収剤や難燃剤などがあり、生活用品に含まれる化学物質は日常生活を豊かにするうえで欠かせない。しかし、それらの化合物がすべて安全とは言い切れない。また、それらは複合的に影響してくることも予想される。内分泌撹乱作用もそのひとつである。本研究課題では、生活用品に含まれる化学物質を広く取り上げ(フタル酸エステル、ピレスロイド系農薬、ビスフェノール類、ムスク系香粧品香料、サリチル酸エステル系着香料、リン系難燃剤等)、女性ホルモン、男性ホルモン、甲状腺ホルモンを始めとするホルモン受容体への影響、プレグナンX受容体(PXR)、コンスティチュウチブアンドロスタン受容体(CAR)を始めとする各種核内受容体を介したホルモンあるいは脂質代謝に対する影響について、代謝的活性変動を考慮に入れた検討を行う。 29年度は、上記研究目的に従い、各種生活用品に含まれる化学物質の個々のER活性、抗AR活性、TR活性、PXR, CARおよびPPARsの活性化についての検討を行った。その結果、農薬類のラットにおける毒性評価(Masuda et al., 2017)、化学物質の甲状腺ホルモン撹乱作用の新たな影響評価(Matsubara et al., 2017)、フタル酸エステル類の加水分解活性を加味した毒性評価(Ozaki et al., 2017)、両生類を用いた化学物質の影響評価(Mori et al., 2017)に関する論文を発表することが出来た。また、学会発表として、ラットにおけるこれらの化合物の核内受容体を介した薬物代謝酵素活性への影響を明らかにすることが出来た。今後、リン系難燃剤を中心に、薬物代謝酵素活性への直接的な影響についての検討を加える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、生活用品に含まれる化学物質の核内受容体活性に関する検討は、概ね順調に進み、幾らかの成果も挙げられている。さらに、合成ムスク香料の核内受容体を介したラットin vivoでの影響においても、活性化される核内受容体に対応したシトクロムP450が誘導されることを見出した。他にも、ベンズトリアゾール系紫外線吸収剤の核内受容体活性およびそのラットin vivoでの薬物代謝酵素活性への影響評価も出来た。
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今後の研究の推進方策 |
生活用品には、防腐剤、品質の維持、着色料、着香料、柔軟剤などとして、多かれ少なかれ化学物質が含まれている。日常生活を送るうえで、このような化学物質を避けることが出来ない。紫外線吸収剤は現在、皮膚を守るうえで、必需品になっている。しかし、皮膚から吸収され、体内に蓄積することも考えられる。また、ベンズトリアゾール系紫外線吸収剤は、プラスチック製品の劣化防止の目的で広く使用されているが、環境への流出が問題になっており、魚介類からも検出されており、魚介類を通して、ヒトへの取り込みが考えられる。これまでに、これらの化学物質が核内受容体を活性化することを見出してきた。次年度も、このような観点から、生活用品に含まれる化学物質の安全性評価を行うことは重要な課題である。また、ブロム化難燃剤の使用が制限されたことより、リン系難燃剤の使用が増加している。すでに、これらの難燃剤の核内受容体活性を見出しているが、新たに加水分解酵素を強く阻害することを見出した。今後、これらのリン系難燃剤も核内受容体を介した安全性への影響や代謝酵素の阻害からの生理作用への影響についても検討する必要がある。さらに、日常生活を豊かにする目的で、柔軟剤、着香料、着色料といった化学物質が使われている。我々は日常、このような化学物質に常に、接触している。本研究課題はこのような化学物質の安全性を評価することを目的としており、次年度もこのような課題に対して、対処する意向である。
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次年度使用額が生じた理由 |
課題研究遂行に必要な核内受容体活性測定キットなどを購入し、ほぼ予定通りに、積極的な研究活動を行ったが、翌年度に研究代表者および5人の分担者のそれぞれの繰り越し金が生じた。 本研究課題を遂行するには、核内受容体活性あるいは薬物代謝酵素活性の測定キットが必須である。これらのキットは高額であるために、繰越金および次年度配分予算を有効に使用し、社会のニーズに答えうる成果を挙げることを目標とする。
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