研究実績の概要 |
ポリ(ADP-リボース)(PAR)は細胞内のDNA損傷に応じて生成する高分子である。そのためDNA損傷後のPARの生成量を測定することで,化合物のDNA損傷活性を定量的に評価できることが期待される。PARはアルカリフォスファターゼ(AP)などの処理により単位構造のリボシルアデノシン(R-Ado)まで分解されるため,細胞からPARを回収後,酵素的に加水分解処理を行い,目的とするR-AdoをLC/MS/MSにより分析する方法を検討した。細胞を過酸化水素で処理し,30分後に細胞を固定し,アルカリ処理を行いタンパク質からPARを脱離させた。さらにDNAse,RNAse, Proteinaseで細胞内高分子を処理し,得られた溶液をさらにフォスフォジエステラーぜ及びAPで処理を行い,LC/MS/MSで測定を行なった。しかしながら,この方法では目的とするR-Adoの検出を行うことができなかった。そこで,細胞内高分子を酵素で処理した溶液からPARを精製する処理を一段階加えることとした。既知文献を参考に,PARを含む溶液をmicroRNA精製カラムで精製し,その後,酵素的な加水分解処理を行うことで,R-AdoのピークをLC/MS/MS上で確認できた。そのため,細胞からのPARの精製が必要であることがわかったが,操作が煩雑であるため,今後より簡易化したプロセスを構築する必要がある。またLC/MS/MSで検出されたピークは,過酸化水素の濃度依存的にピーク面積値の上昇が観測されたため,DNA損傷の量に応じてPARの生成量が増加していることが示唆された。ピーク面積値と過酸化水素の処理濃度は正の相関を示したため,定量的な評価が可能であることがわかった。
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