ポリADPリボースの加水分解産物であるリボシルアデノシンの合成を試みた。リボシルアデノシンとしては,既知文献にいくつかの方法論が記載されているのでその方法に準拠して行った。まずアデノシンの3’5’位を選択的にシリル化し,その後ベンジルで保護したリボースを反応させた。既知の方法に基づいても,2'-OH 選択的に反応が進行せず,アミノ基の保護等試みたが,現時点で十分な量の標準物質の合成にはいたっていない。現時点でリボースの立体異性体が生成しているかについても現時点で不明であるため,引き続き,合成方法について検討する。 一方,いくつかのがん細胞で,過酸化水素処理により,R-Adoの生成が確認されたが,CHL細胞を用いるときが最もR-Adoの生成が良いことがわかった。R-Adoの生成は細胞処理後30分で最も多く生成されており,1時間でもとの量まで減少した。一方,いくつかのアルキル化剤で同様の実験を行ったところ,ニトロソグアニジンやメタンスルホン酸メチルエステルなどについても同様にR-Adoの生成が確認された。一方でグリシドールやエピクロロヒドリンなどについても生成量は僅かであるが,その生成が確認できた。このR-Adoの定量値は,培養細胞を用いる小核試験の結果と相関しており,化合物の遺伝毒性の強弱を表していると考えられる。 アルキル化剤の中でマイトマイシンCは強い小核誘発性化合物であるが,この化合物は試薬投与後すぐにR-Adoの生成は確認されなかった。しかしながら24時間後には,バックグランドに比して有意な生成が確認された。本化合物は代謝を必要とするため,代謝に時間がかかったためと考えられる。ニトロソグアニジンについても代謝を必要とするが,本化合物の場合は1時間でR-Adoの生成のピークとなった。化合物により,R-adoの生成時間に差があることがわかった。
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