研究課題/領域番号 |
16K00565
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研究機関 | 第一薬科大学 |
研究代表者 |
藤井 由希子 第一薬科大学, 薬学部, 講師 (80733542)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フッ素化カルボン酸 / 衛生学 / 環境保健 / 環境動態 / 体内動態 |
研究実績の概要 |
撥水加工剤として使用されているフッ素化リン酸エステル類(PAPs)は環境中または生体内で代謝されて長鎖カルボン酸類(PFCAs)として残留性を示すと考えられる。本研究では、ヒトに残留するPFCAsへのPAPsの寄与を評価するため、以下の取り組みを行う。①海洋試料におけるPFCAsとPAPsの分析から、生体濃縮と環境動態を明らかにする。②ヒト関連試料(血液・食事)を用いてPAPsによるPFCAs蓄積への寄与を評価する。③vivoもしくはvitroの実験により吸収などの体内動態パラメーターを得る。これらの結果を総括し、曝露評価およびヒト体内負荷量管理の枠組みを構築することを目標としている。 29年度までに海洋生態系での生体濃縮を明らかにするために、各栄養段階(クジラ類、マグロ類、タラ類、アサリ類)での化学計測を行った。PFCAsは全ての栄養段階で検出されたが、PAPs類はクジラ類では検出されたものの、アサリ類では未検出であった。また日本人のヒト血清の分析を行ったところ、PFCAsの血中濃度に海洋ほ乳類とヒトでの種差が見られた。ヒト小腸の円柱上皮細胞モデルであるCaco2細胞を用いて評価を行ったところ、一部のPFCAsにおいてトランスポーターによる輸送が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海洋生態系での生体濃縮を明らかにするために、各栄養段階(クジラ類、マグロ類、タラ類、アサリ類)での化学計測を行った。PFCAsは全ての栄養段階で検出されたが、PAPs類はクジラ類では検出されたものの、アサリ類では未検出であった。本年度は残りの検体の分析を行い、PAPsとPFCAsの相関関係を検討する。ヒト血清の分析を行ったところ、PFCAsの血中濃度に海洋ほ乳類とヒトでの種差が見られた。その原因を探るために、ヒト小腸の円柱上皮細胞モデルであるCaco2細胞を用いてPFCAsの消化管膜透過性を評価し、トランスポーターによる輸送を見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
29年度までの海洋生態系調査で広範囲のPFCAsの分布データが得られたので、本年度はデータベース化と解析を行い、環境動態と地域差明らかにする。また食用魚類からも検出されたことから、ヒト曝露量の推定と、血中のパターンとの比較を行う。PAPsについては予想より低濃度であり、検出限界以下のサンプルがあったため、検出感度の向上を検討する。体内動態パラメーターについては引き続きvitroを用いた実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった内部標準試薬の代わりとして研究室での合成試薬が利用できたため差額が生じた。差額はさらなる分析検体の収集と、化学計測に使用する消耗品の購入に充てる。
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