研究課題/領域番号 |
16K00566
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
大石 善隆 福井県立大学, 学術教養センター, 准教授 (80578138)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コケ / 生物指標 / 窒素汚染 / 越境大気汚染 / 生態系機能 |
研究実績の概要 |
近年、窒素降下物による汚染が自然環境に及ぼす影響が危惧されており、その実態の解明・評価が急務となっている。そこで、本研究では、生物指標を用いて窒素降下物の影響を広域で評価するとともに、過去の植物標本を利用することで、近年の窒素汚染の動態の把握を試みる。 なお、本年度は、本研究の妥当性を高め、かつその成果をより有意義なものにしていくため、(a)窒素汚染が生態系にどのような影響を与えるか考察するとともに、(b)大気降下物の由来源を判別できる金属同位体を利用することで、窒素降下物に対するコケ植物の指標性についても検討した。 まず、窒素汚染の評価については、山岳域を中心に調査を行った。この調査から、高山域においても越境由来の窒素による汚染が生じていること、ならびにこの汚染は季節風が吹きつける西斜面で強く生じていることが明らかになった。以上の結果を論文にまとめるとともに、これまでサンプルが未採取だった地域(白山など)などからコケサンプルの採取を行った。 次に(a)、(b)について、 (a)窒素汚染が生態系に与える影響について、コケの水分涵養機能に着目して検討した。その結果、亜高山帯においてコケは大きな水分涵養機能を有していることが明らかになった。一方で、亜高山帯の一部では窒素降下物による強い影響がみられたことから、窒素汚染が山岳生態系を大きく変化させる可能性が懸念される。本成果についても、論文を執筆した。 (b)コケ植物内の金属同位体(ストロンチウム・鉛)の分析を行い、現在、この結果と窒素汚染との関連を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の成果から、窒素降下物による汚染がコケを介して生態系に与えるプロセスについて、新たな知見を得ることができた。しかし、一部で追加調査が必要な地域もあり、全体として、当初の計画より、遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、調査が必要な地域で調査を行うとともに、これまで得られた結果をリンクさせ、窒素汚染を時空間スケールで明らかにするとともに、その生態系への影響についても考察を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調査・分析が遅れたため、次年度使用額が生じた。今後、全体の調査計画・得られたデータを鑑みつつ、順次、調査・実験を進めていく。
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