本研究では、コケ植物を指標として、時空間スケールで日本における窒素汚染の影響を明らかにした。その結果、山岳域では高標高域の西斜面において、大陸由来の窒素化合物による汚染が進行しつつあることが明らかになった。その一方、日本全域を対象とした分析では、窒素汚染の空間パターンを検出することができなかった。この理由として、コケの窒素成分には、大気降下物だけでなく、土壌の窒素成分の影響も強く受けていたことが挙げられる。そのため、土壌タイプが大きく異なる地域間では、窒素汚染の評価が難しかったのだろう。また、過去の標本を利用してこの70年間における窒素汚染の変遷の評価を試みたが、明確な傾向はみられなかった。
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