研究課題/領域番号 |
16K00567
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川田 清和 筑波大学, 生命環境系, 助教 (70529859)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 過放牧 / 資源選択性 / 草原 / グレイジング / モンゴル |
研究実績の概要 |
放牧圧354頭/haおよび796頭/haにおけるヒツジのグレイジング定量化を行った.放牧試験は5か所で行い,それぞれに植生調査枠を設置して,放牧前(0 h),放牧後約6時間(6 h),放牧後約12時間(12 h)で調査を行った.すべての種をリストアップし,それぞれの種について草丈および被度を測定し,乗算値を推定地上部現存量(E-AGB)とした.資源選択性の検証にはManlyの選択性指数を用いた.2016年6月の調査では,2 m区におけるE-AGBは,放牧6 hで51.7%減少し,放牧12 hで77.8%減少した.3 m区におけるE-AGBは,放牧6 hで64.5%減少し,放牧12 hで74.8%減少した.すべての放牧試験区において,0 hと6 hおよび0 hと12 hの間に有意差が認められた(P < 0.01).一方で,各放牧時間における家畜および放牧密度の違いによるE-AGBの差は認められなかった.放牧6 hにおいて資源選択性は認められたが,放牧12 hにおける資源選択性は認められなかった.2016年9月の調査では,2 m区におけるE-AGBは,放牧6 hで52.6%減少し,放牧12 hで64.1%減少した.3 m区におけるE-AGBは,放牧6 hで46.1%減少し,放牧12 hで58.7%減少した.すべての放牧試験区において,0 hと6 hおよび0 hと12 hの間に有意差が認められた(P < 0.01).一方で,各放牧時間における家畜および放牧密度の違いによるE-AGBの差は認められなかった.また,放牧6 hおよび放牧12 hにおける資源選択性は認められなかった.本研究の結果から,放牧密度に関係なく放牧6 hでE-AGBの半分以上を食べ,放牧12 hでE-AGBの約7割を食べていることがわかった.喫食行動による植生喪失は地上部現存量の約7割程度であると考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに本年度の野外調査を完了し,植生データに関する解析が終わっている.現在は,ウェアラブルカメラで撮影した動画解析を進めている.植物の判別が難しい場面もあるのでなかなか思うように進まないところもあるが,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
カメラデータの解析に想定以上の時間がかかることが明らかになってきた.動画解析は高度な技術と専門知識が必要なため,外注することができない.自らの動画分析にかけるエフォートを高めて推進していきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査費用が予定よりも多くなったため1回分の調査費用の増加分を運営費交付金(別予算)で支出したが,清算後,事前計算との差額が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
本研究成果に関する総説出版を追加することを考えており,当初計画を見直し,効率的な経費執行を行ったうえで,総説の執筆に係る費用(論文校正料等)の一部,及び次年度で必要な消耗品等の購入に充てる予定である.
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