研究課題/領域番号 |
16K00569
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
サトウ 恵 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70601813)
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研究分担者 |
渡辺 幸三 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 准教授 (80634435)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マダニ / マダニ媒介性感染症 / 環境変化 |
研究実績の概要 |
マダニ媒介性感染症として新興感染症であるSFTSや再興感染症である日本紅斑熱リケッチアは近年発生率が増えており、媒介者であるマダニそしてマダニ保有病原体の分布状況、を把握することは感染のリスクを予測する上で重要である。新潟県では1950年代以降マダニの調査はほぼ行われておらず、現在の新潟県におけるマダニの分布状況は不明であった。本年度は、現在の新潟県におけるマダニの分布状況、マダニ中での病原体の感染状況を確認するために、新潟県内22か所においてマダニ991匹を収集し分類を行った。本調査での採取点では6種のマダニの存在を確認した(Haemophysalis longicornis, H. flava, Ixodes ovatus, I. persulcatus, I. nipponensis, Dermacentor taiwanensis)。1950年台の調査と比較すると存在が確認されたマダニ種が大きく変わってきていることが確認された。マダニ成虫1匹1検体、若虫・幼虫は5匹プール1検体とし386検体においてボレリア、リケッチア、SFTS(重症熱性血小板減少症候群ウイルス)の3種の病原体の検出を行った。ボレリアは9/386(2.3%)、リケッチアが18/386(4.7%)から検出されたが、SFTSに関しては全検体陰性となった。ボレリア、リケッチア陽性検体においてはシークエンス解析を行い種の確定を行った。マダニの病原体保有率は低いが、県内でのマダニ咬傷によりマダニ媒介性疾患が起こりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マダニ採取地、マダニ数ともに当初予定より多く調査をすることが出来、新潟県内でのマダニの分布状況の一部が明らかとなった。また調査中に新潟県内で長年野生動物の調査を行っているグループ、また過去に県内でマダニの調査を行っていた研究者、本学農学部で現在野生動物の調査を行っている研究者と情報共有が可能となり、また協力体制を得られるようになった。新潟県におけるマダニの病原体保有状況の一部が明らかとなり、今回調べたマダニで病原体を多く保有しているマダニ(属)がIxodesであることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も新潟県内におけるマダニの採取・分類を引き続き行う。本年度は野生動物との関連を明らかにするために、マダニ中の宿主遺伝子の解析を行い、県内マダニが吸血している動物種を推定する。また、農学部の野生動物の調査の結果とマダニの分布状況を同一地図上に載せることを計画している。当初、次世代シークエンス解析を病原体の方で応用することを計画していたが、ヒトの感染症ではないマダニ自体の感染症を検出し、情報の混乱がおこる可能性もあり、次世代シークエンス解析はマダニの宿主の解析の方へ応用するこことした。またマダニと病原体の種特異性解析(なぜある属のマダニが病原体の保有率が高いのか)も次世代シークエンス解析が利用できないか検討をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マダニの採取は天候に大きく左右される。天候不良によりマダニの採取日を多く出来ず旅費の減少となった。またそれに伴い検体数も伸び悩んだため、試薬類の使用量が予定よりも減った。また上越地域での採取日程が大幅に少なかったため旅費が減少している。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は上越地方でのマダニ採取日程を増やし、またマダニ分類の研修に出席するため、旅費として使用する。また昨年度、マダニの形態学分類に使用する顕微鏡カメラが老朽化により使用不可となったため、その購入費として使用する。
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