研究課題/領域番号 |
16K00577
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
Tin・Tin Win・Shwe 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (00391128)
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研究分担者 |
渡邉 英宏 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 室長 (60370269)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経毒性 / 環境汚染物質 / 発達期 / 二次生成有機エアロゾル / ラット |
研究実績の概要 |
29年度はディーゼル排ガス由来二次生成有機エアロゾル(SOA)曝露されたラットの社会行動、遺伝子発現、及び非侵襲的な画像化方法(MRI)で脳の変化を評価した。実験動物として妊娠8日のSprague Dawleyラットを日本チャールス・リバー(株)より購入し、妊娠13日目から出生後21日目まで全身吸入曝露チャンバーを用いて、清浄空気群 (Control、n = 8)、ディーゼル排気ガス群 (DEP, n = 8)、 DEPにオゾンを加えたDE-SOA群 (n = 8)の曝露(5時間/日、5日/週)を行った。出生後11~13 週齢の雄ラット(名群8匹)にビデオ・トラッキング・システムを用いて、社会行動を観察した。行動テスト終了24時間後に、深麻酔下で脱血後脳を採取し、海馬における社会行動ト関連する遺伝子、炎症性サイトカイン及び酸化ストレスマーカー等のmRNA 発現をリアルタイムRT-PCR法で調べた。本研究の結果、DE-SOAの発達期曝露は雄ラットの社交性、社会的新規性選好や社会的相互作用に影響を及ぼすことが示唆された。DE-SOAの発達期曝露が海馬における社会行動、特に、自閉症と関連する遺伝子serotonin, BDNF、炎症性サイトカインIL-1beta;及び酸化ストレスマーカーHO1等を介して一部の社会行動に影響を引き起こす可能性が認められた。本研究でのDE-SOA に含まれている毒性成分については有機化合物に含まれる成分が有力候補であるが、未だ毒性成分は明らかになっていない。それらの毒性成分が、胎児期に胎盤を、乳児期に嗅神経を介して脳に入り、このような影響を引き起こしている可能性が考えられた。DE-SOAの曝露がどのような経路を介して脳機能の異常を誘導するのか今後詳しく検討を行う必要がある。非侵襲的な画像化方法(MRI)を用いた脳の評価では、白質体積に関してモデルラット(Fmr1 KO, Nign3 KO)で有意に小さいという結果が得られた。DE-SOAの曝露ラットの脳のMRI 測定は検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り研究を進めて、結果等を学会発表を行い、まとめた結果を論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は発達期にディーゼル排ガス由来二次生成有機エアロゾル(SOA)曝露されたラットの新しい社会行動(Social dominance behavior)、前頭前野における遺伝子発現、及び非侵襲的な画像化方法(MRI)で脳の変化を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30 年度は最終年度で、今までの結果に基づいて、新たなバイオマーカー等を調べるため生じた。今年度は実験に必要な関連あるバイオマーカーを調べ、全部の結果をまとめて学会、論文発表のために利用する。
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