研究課題/領域番号 |
16K00578
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
岸本 文紅 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 気候変動対応研究領域, 上級研究員 (60334033)
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研究分担者 |
大浦 典子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 企画管理部, 広報プランナー (50354022)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生分解性マルチ / 環境保全型農業 / 温室効果ガス / LCA評価 / 一酸化二窒素 / 省力化 |
研究実績の概要 |
年度計画の通り、【課題1】代表的な生分解性マルチ栽培体系における温室効果ガス発生の定量的評価(圃場実験)について、マルチ被覆条件下で自動開閉チャンバーによる観測できるための改良を加え、野外条件でのテストを行った。 【課題2】生分解性マルチの多様性と土壌特性を考慮した温室効果ガス発生とメカニズム解明について:ライシメータ試験では、 3種類の土壌タイプ(灰色低地土、褐色低地土、黒ボク土)のライシメータ(福島県農試)において、市販の生分解性マルチフィルムを2か月展張後、除去あるいは鋤き込んだ場合の温室効果ガス(CO2, N2O, CH4)発生量を調査した。その結果、土壌タイプによる温室効果ガス発生量の違いが認められたものの、マルチフィルムの鋤き込み由来の温室効果ガス発生量の違いが認められなかった。室内培養実験では、シャーレを用いた密閉チャンバー法(CC法)による土壌中での生プラマルチの生分解過程に伴う二酸化炭素(CO2)発生量を評価する測定手法を確立した。供試土壌として、先行研究で報告のあるPBSA生分解フィルムを早く分解する土壌(岡山土壌:沖積土)と極めて遅く分解する土壌(農環研土壌:黒ボク土)を用いて(乾土60g相当の土に1gPBSAを添加)、土壌による生分解の違いが検出できるのかを検討した。岡山土壌を用いた培養実験で、目視によりPBSAの分解を確認したところ、1週後には分解し始めており、その後分解は続いた。9週後にはほぼ回収することができなくなり、15週後には、完全に消失した。これに伴いCO2の発生速度の変化が見られた。CO2発生速度の経時変化から25週目でPBSAの理論分解率は88.8%と見積もられ、CO2評価法による完全生分解の確認ができた。また、生分解性フィルムを早く分解できる岡山土壌(沖積土)に対し、農環研土壌(黒ボク土)の場合CO2の発生速度は1/10程度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度計画通り、課題1の自動開閉チャンバーの改良を行い、課題2のライシメータ試験と室内培養実験とも順調に進めている。特に課題2の室内培養実験は生分解性マルチの土壌中の生分解過程をCO2放出量から評価手法が確立され、それに伴うほかの温室効果ガス(N2OとCH4)に及ぼす影響の定量的な評価が可能となった。 課題3についても、LCA評価のための作業時間やマルチの種類に対応するCO2原単位に関する論文収集とレビューも開始した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、課題1の圃場観測を9月より開始するとともに、課題2のライシメータ試験を進め、複数年のデータを取得するとともに、ポリマー組成が異なる生分解性マルチ(市販)を変えて試験を繰り返す。課題2の室内培養実験では、生分解性マルチの土壌中の生分解過程における温室効果ガスの変化を、異なる土・異なるポリマー組成の生分解性マルチを用いて実験を繰り返し行う。 課題3のLCA評価も原単位の解析とともに、「最適管理指標」の試算のための情報を集約する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者は企画管理部へ異動した28年度は直接研究に携わる事が難しかった。そのため、当該者に係る消耗品費、学会発表や打ち合わせの旅費などの利用を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度については、分担者をはじめ、研究に携わっていただく時間を確保し、研究を進めるため当初の予定通り、消耗品購入、学会発表や打ち合わせの旅費として利用する。
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