研究課題/領域番号 |
16K00582
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松岡 圭介 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90384635)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 泡沫分離法 / セシウム / 界面活性剤 / マイクロバブル |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究から、泡沫分離装置を完成させた。また、使用する界面活性剤の最も有効な濃度を決定した。アルカリ金属のセシウムとナトリウム間の除去率を比較すると、目的とするセシウムが優先的に除去された。平成29年度は泡沫分離を用いたアルカリ金属及びアルカリ土類金属元素の除去率の決定を行った。その金属の排出機構が水和イオン半径や静電的な強さに基づくものか、化学的相互作用に基づくものなのか、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩化物を用いて決定した。ドデシル硫酸ナトリウムを用いた泡沫分離測定の結果、アルカリ金属類の場合、Cs+ > Rb+ > K+ > Li+の順に優先的にアルカリ金属は除去された。この順位は結晶のイオン半径に比例し、水溶液中での水和半径に反比例している。すなわち、金属の排出機構は界面活性剤のイオン性親水基との静電的相互作用で吸着し、水溶液中のイオン半径が小さい金属の方が水溶液中から排出されやすいことが判明した。二価のカチオンであるアルカリ土類金属と遷移金属でも同様の実験を行った。現在、その実験系に関しては再現実験を繰り返し行っている。反応速度の解析結果から泡沫分離法の実験では、1次反応でアルカリ金属が減少することが分かった。初濃度依存性がないことからも、矛盾のない結果であるといえる。つまり、除去するアルカリ金属は初濃度には関係がなく、泡沫分離の時間に従い確実に減少していくことが分かった。これまでの研究成果の中間報告として、AOCS2017国際会議(東京)で「Removal of Alkali Metals by Using Foam Separation I」というタイトルで口頭発表を行った。論文として、Journal of molecular liquidsへ、これまでの研究成果を投稿し、2018年5月1日に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
泡沫分離実験装置の改良に関しては、水中での気泡の発生に使用される器具として、ウッドストーンを選択し、ミリサイズ程度の気泡を発生させることができた。また、気/液界面の吸着面積を増やすことを目的として、気泡を形成する装置にナノからマイクロバブルを発生させる装置を組み合わせて実験を行えるようになった。泡沫分離装置の実験装置はほぼ完成することができた。これまでの研究でマイクロバブル発生装置を用いて5時間の実験で水溶液から約80%のCs除去を達成した。Csの除去率は、Csの初濃度が変化しても、大きく変化しなかった。しかし、Csの初濃度が低いほど除去率が微増している。Na除去率は、Cs濃度が高いほど低くなり、選択性も増した。反応速度の解析から、積分法を用いると、泡沫分離法では1次反応でCsが減少することが分かった。しかし、SPring-8の小角X線散乱を用いても、その気泡の水溶液中でのサイズを求めることは成功していない。アルカリ金属及びアルカリ土類金属類を用いて、イオン性界面活性剤を用いた泡沫分離の排出機構が水和イオン半径や静電的な強さに基づくものか、化学的相互作用に基づくものなのか、研究を行ってきた。アルカリ金属類のみの結果であるが、その吸着の機構は静電相互作用であり、水和半径に反比例して吸着しやすいことが分かった。もしくは、結晶のイオン半径に比例してアルカリ金属イオンは排出された。これらの一連の結果は中間報告として国際会議で発表し、論文として投稿した。全体として、計画どおりに研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
汎用的な陰イオン性界面活性剤のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を使用して80%のセシウムイオンの除去を達成した。今回の研究の工夫の一つとして、吸着率が高い界面活性剤を研究して、80%以上の除去作用を高める。一般的な界面活性剤、例えば、脂肪酸石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、中性の非イオン性界面活性剤も研究の対象とする。これまでの研究成果に基づくと、この水溶液からの金属除去はイオン性界面活性剤と金属イオンの静電相互作用が主な吸着機構であると判明したため、二価の陰イオンをもつスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムを新たに研究の対象とする。吸着のイオンサイトが一分子あたり、二つあるため、対象とする金属が速い速度で除去されることが期待される。また、比較的シンプルな分子構造の界面活性剤を用いて、どのような界面活性剤が有効なのかスクリーニングする。疎水基であるアルキル鎖長の依存性、親水基の依存性など、放射性金属化合物の除去に関して有効な分子構造を研究する。特に、気泡性が高く、安価なアルキルベンゼンスルホン酸塩に期待しており、多種の金属イオンを含む溶液においても、90%以上の除去効果を目指す。また、SPring-8の小角X線散乱装置を用い、この研究課題と関係しているアルカリ及びアルカリ土類金属の水和半径の見積もりとスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムの界面活性剤物性に関する研究を行う。
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