研究課題/領域番号 |
16K00583
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
姫野 修廣 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (20114887)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 環境技術 / 汚染物質除去技術 / シャワークリーニング |
研究実績の概要 |
本研究では,通常の方法では除去が難しいサブミクロン粒子を除去する方法として,粉塵を含む気流中に大量の水蒸気を添加することにより,サブミクロン粒子を凝縮核としてミストを発生させ,結果として除去粒子を大きくすることによって除去効率を高める方法について研究を行う.また併せて,サブミクロン粒子を含む流体を高温にすることによりブラウン運動を活発化させて粒子を凝集させ,粒子径を大きくすることにより除去効率を高める方法についても研究を行う. 本年度は,交付決定が10月と遅れたため,装置の改良に重点を置いて研究を行った.蒸気発生部に使用するヒーター容量を増設するため,蒸気発生器を1台新たに製作した.またこれに伴い,使用電力量が増加するため,供給電力調節用の機器の新設を行った.これらの改良によって,これまでの2倍の蒸気を発生できるようになった.改良後,水蒸気添加実験を行ったところ,測定部にレーザー光を照射することによって,ミストが大量に発生していることを確認した. また,サブミクロン粒子を高温にして凝集させ,粒子径を大きくして捕集効率を上げる方法についても,研究を行った.これまで電子顕微鏡観察によって高温にすることにより凝集が進むことは確認しているが,定量的な検討は行えていなかった.そのため本年度は,パーティクルカウンターを設備備品として新たに購入し,0.3μmから10μmまで6段階の粒子径について,粒子数をカウントできるようにした.これを使用して実験を行ったところ,空気流の加熱温度を変化させることによって,温度が高いほど凝集が進むことは粒子径分布を測定することにより確認できたが,現状では測定値の精度の点で問題がある.すなわちパーティクルカウンターの測定限界の関係で,粒子数が多くなると,測定精度が低下する傾向にある.この点を改善すべく,現在研究を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付決定が10月になったため,学会に発表できるデータは得られていないが,実験装置の製作は順調に進んでおり,ミストの発生も確認できた. また加熱によってサブミクロン粒子を凝集させて捕集効率を上げる実験については,購入したパーティクルカウンターの測定精度の問題のため,精度の高い粒子径分布の測定ができていないが,凝集現象について定量的な確認は,一応行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
現状では,当初の研究計画から基本的に変更はない.「研究実績の概要」で述べたように,水蒸気添加装置の改良・製作は一応完成しているので,実際に実験を行って不十分な点はさらに改良を重ねながら,新しい装置を用いて,①粉塵除去実験と②臭い成分除去実験を行う. ①粉塵除去実験では,サブミクロン粒子として線香の煙を用いて実験を行い,水蒸気添加による液滴径増加の効果と除去率促進効果について実験的に明らかにする.またシャワーの流量・密度の影響も明らかにするため,ミクロンオーダー粒子試料としてフライアッシュを使用して実験を行う. ②臭い成分除去実験では,水蒸気添加によってミスト状液滴の液滴径増大とともに臭い成分の除去率も改善されると考えている.エチルアミンを主たる臭い成分試料として,水蒸気添加の効果を実験的に明らかにする. 以上の水蒸気添加による除去率促進法と並行して,平成28年度から行っている加熱による凝集効果についても研究を進める.現状では,パーティクルカウンターの測定精度の問題から,高精度の粒子径分布の測定が行えていないが,サンプリングした粉塵を含む搬送気体試料を希釈するなどの方法を試みて,さらに高精度の測定を行う.こうして凝集効果を定量的に明らかにしたのち,理論的にも解析を進める予定である.今のところブラウン運動による凝集機構が支配的と考えており,ブラウン凝集に関する理論を適用して理論と実験の両面から解析を試みる予定でいる.
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次年度使用額が生じた理由 |
交付決定が10月と遅れたため,測定機器の選定を十分検討している余裕がなかったためである.本年度購入したパーティクルカウンターは,「研究実績の概要」で述べたように,測定限界の問題から現状では高精度の粒子径分布の測定が行えていない.そのため新たに測定装置の購入が必要であるが,その選定を十分検討するために,測定器の購入を次年度に繰り越した.さらにミスト状液滴の測定を行う必要があり,そのための測定装置の購入も次年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
上述のように,次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて粉塵や液滴粒子の計測装置の購入に主として使用する予定である.また装置の改良や消耗品の費用としても使用する予定である.
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