研究課題/領域番号 |
16K00589
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宮武 宗利 宮崎大学, 工学部, 助教 (40315354)
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研究分担者 |
塩盛 弘一郎 宮崎大学, 工学部, 准教授 (80235506)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境技術 / ヒ素の無毒化 / 酵素工学 |
研究実績の概要 |
直接in vitroでヒ素メチル基転移酵素(arsM)を使ってメチル化反応を行うには、まずメチル化活性の高いarsMの溶液を調製する必要がある。現在、申請者はヒ素メチル化細菌Cellulomonas sp. K63株が保有するarsM遺伝子の塩基配列を明らかにしている。このことを利用して、平成28年度は遺伝子組み換え技術により、arsM遺伝子を大腸菌で発現させることにした。まずCellulomonas sp. K63株から染色体DNAを抽出し鋳型し、arsM遺伝子の塩基配列をもとに設計したプライマーを用いて、PCRによりarsM遺伝子を含むDNA断片を増幅した。しかしDNA断片が得られなかったため、外部の人工遺伝子合成受託サービスを利用して挿入DNA断片を調製した。次に、得られたDNA断片をベクター(pFLAG)に挿入し、arsM遺伝子を持つ組み換えプラスミドを作製した。その際、SIGMA-ALDRICH社が提供しているFLAGタンパク質発現システムを使用した。さらに、組み換えプラスミドを宿主大腸菌DH5αに形質転換し、arsM遺伝子の発現を試みた。電気泳動(PAGE)により、酵素タンパク質の産生は確認した。 本研究では、実用化への可能性を探るため、調製されたarsMを直接、固定化担体に固定化し連続してメチル化反応を行えるかどうかを検証することにした。今回は、arsMを固定化する方法として、PVA-冷凍法もしくは酵素内包多孔質マイクロカプセル法で行うことにした。平成28年度はarsMを固定化するのではなく、市販の酵素(α-グルコシダーゼ)を用いて固定化を行い、PVA-冷凍法が酵素タンパク質の固定化に応用できるかどうかを検証した。その結果、酵素たんぱく質の固定化には成功したが、固定化担体の成分が酵素反応を阻害したため効率的な活性の発現には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度はCellulomonas sp. K63株のarsM遺伝子を持つ組み換えプラスミドを作製した。次に、組み換えプラスミドを宿主大腸菌DH5αに形質転換し、arsM遺伝子の発現を試みた。電気泳動(PAGE)により、酵素タンパク質の産生は確認した。さらに、組み換え体大腸菌が産生したarsMを抗FLAGアフィニティーゲルによるカラム法を用いて精製する予定であったが、arsMの精製には至らなかった。また、市販の酵素を用いて固定化を行い、PVA-冷凍法が酵素タンパク質の固定化に応用できるかどうかを検証した。しかし、酵素内包多孔質マイクロカプセル法の検証が出来ていない。 平成28年度は、さらに新規なヒ素メチル化活性を有する微生物の探索も行った。その結果、新たに宮崎県内の土壌からヒ素メチル化細菌Bordetella petrii KC42株を分離することができた。今回新たに分離したKC42株はヒ素メチル化能以外にヒ素吸着能を有することが分かったため、菌体内抽出液を用いたヒ素のメチル化特性と乾燥菌体を用いたヒ素の吸着特性を検討し、ヒ素に対する特性を明らかにすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ヒ素を形態別に測定するための測定機器の故障によりarsMの活性を確認することが出来ないため、測定機器を修理しヒ素を形態別に測定できるようにする。それとは別に、メチル化活性の定量方法として、メチルトランスフェラーゼ活性測定キットを使用する。これにより、酵素活性を簡便に測定ができ実験時間の短縮につながると考えられる。 平成29年度は、平成28年度に出来ていなかった組み換え体大腸菌が産生したarsMの精製を、抗FLAGアフィニティーゲルによるカラム法を用いて実施する。次に、調製されたarsMを使って、無機ヒ素をTMAOに変換する最適な条件を検討する。 市販の酵素を用いて酵素内包多孔質マイクロカプセル法を検証する。次に調製されたarsMをPVA-冷凍法と酵素内包多孔質マイクロカプセル法で固定化し、調製条件を確立する。 平成28年度に新たに分離したKC42株については、これまでのヒ素メチル化細菌と違いヒ素メチル化活性に加え、ヒ素吸着能を有していることから、その特性を生かした無毒化処理への適用の可能性を探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析機器の故障等により、予定した研究が推進できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
分析機器の修理代と別の方法で酵素の活性を測定するための試薬代として、また平成28年度に実施できなかった実験の消耗品費として、次年度使用額分を使用する。翌年度分は平成29年度の実験計画に基づいて使用する。主に酵素調製・反応用とマイクロカプセル調製用の試薬やガラス器具等の消耗品費として使用する予定である。
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