直接in vitroでヒ素メチル基転移酵素(arsM)を使ってメチル化反応を効率的に行うには、まずメチル化活性の高いarsMの溶液を調製する必要がある。現在、申請者はヒ素メチル化細菌Cellulomonas sp. K63株が保有するarsM遺伝子の塩基配列を明らかにしている。平成28年度では、arsM遺伝子を持つ組み換えプラスミドを作製し、宿主大腸菌DH5αでarsM遺伝子の発現を試み、酵素タンパク質の産生を確認した。平成29年度では、組み換え体大腸菌が産生したarsMを精製し、精製した酵素の活性を測定した。その結果、酵素溶液中の塩が反応を阻害していることが分かった。平成30年度では、酵素溶液中の塩を取り除くために、限外ろ過膜を使った脱塩を行い、活性を確認した。令和元年度では、調製した精製酵素を使ってメチル化反応を行い、反応液中のヒ素濃度を形態別に測定した。その結果、トリメチルアルシンオキシド(TMAO)を確認することができた。しかし、回収量が少ないため、酵素の固定化には精製酵素を使わず粗酵素溶液を使用した。 本研究では、実用化への可能性を探るため、調製されたarsMを固定化担体に固定化し連続したメチル化反応の可能性を検証することにしている。令和元年度ではマイクロカプセル(MC)の調製方法を検討した結果、長期間酵素活性を維持したMCを調製することができた。調製したMCを使ってメチル化反応を行いヒ素濃度を測定した結果、TMAOを確認することができた。 新たに土壌から分離したヒ素メチル化細菌Bordetella petrii KC42株のarsMについて、K63株と同様にarsM遺伝子を持つ組み換えプラスミドを作製した。令和元年度では、K63株と同様に組み換え体大腸菌が産生したKC42株のarsMをMCに固定化し、メチル化反応により無機ヒ素をTMAOに変換することができた。
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