研究課題/領域番号 |
16K00593
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
樋口 美栄子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (40443014)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 紅色光合成細菌 / 形質転換 / 窒素固定 / 二酸化炭素固定 / ニトロゲナーゼ |
研究実績の概要 |
光合成細菌に外来遺伝子を導入する手段としては、主に大腸菌を用いた接合法が用いられている。しかし接合法では、大腸菌で用いられているような汎用的なベクターなどを直接用いることができず、簡便な手法の開発が望まれている。そこで、カナマイシン耐性遺伝子を持つプラスミドDNAの導入を複数の海洋性紅色光合成細菌を用いて検証した。自然形質転換能を利用した培養液へのプラスミドDNAの直接導入では、カナマイシン耐性のコロニーは得られたが、プラスミドDNAの導入は確認できなかった。一方、光合成細菌を塩化カルシウムで処理することにより作成したコンピテントセルを形質転換に用いたところ、カナマイシン耐性のコロニーが得られ、プラスミドDNAの光合成細菌への導入が確認できた。また、細胞透過性ペプチドとプラスミドDNAとの複合体を作成し、光合成細菌へのプラスミドの導入も試みた。その結果、光合成細菌へのプラスミドDNAの導入は確認できたが、導入効率の改善にはつながらなかった。次に、紅色光合成細菌の持つ窒素固定能について検証した。窒素源を窒素ガスのみとした寒天・液体培地における生育を複数の細菌株について観察した結果、数株の紅色光合成細菌については生育が認められた。窒素のアンモニアへの変換を触媒するニトロゲナーゼの活性をアセチレン還元アッセイにより評価した結果、窒素ガス環境下でよい生育を示した株は、高いニトロゲナーゼ活性を示していた。これらの結果から、紅色光合成細菌は、ニトロゲナーゼによる窒素固定により窒素ガスを単独の窒素源として生育できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケミカルコンピテントセルを用いた新たな形質転換系を確立し、窒素固定能を複数の光合成細菌株を用いて検証できたことから、全体的に順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、形質転換の効率改善と、二酸化炭素固定能の評価、窒素固定による代謝物の変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題で使用予定であった設備が、所属する研究室の他の予算で購入可能であったため、購入する必要がなくなり、次年度に使用することとした。想定より研究内容が進展したため、30年度は新しい設備に予算を使用する予定である。
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