研究課題/領域番号 |
16K00595
|
研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
濱元 栄起 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 専門研究員 (40511978)
|
研究分担者 |
八戸 昭一 埼玉県環境科学国際センター, 土壌・地下水・地盤担当, 主任研究員 (70415397)
宮越 昭暢 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (30392666)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地中熱エネルギー / 関東平野 / 地下温度測定 / 地球温暖化 / 再生可能エネルギー |
研究実績の概要 |
地中熱利用システムは、地球温暖化対策や都市のヒートアイランドの抑制など環境負荷低減効果があり、また政策的な支援もあって今後急速な普及が予測されている。一方、地中の人為的な採排熱による環境への影響も懸念されているが、これまで広域的な評価はなされていない。地中熱利用に関する評価を行ううえで「地質情報」、「地下水特性」、「地下温度情報」を知ることが重要である。このうち地下温度情報の整備が遅れている。本研究では関東平野を対象として地下の熱環境調査を行う。地下の熱環境を調べるもっとも直接的な方法は、深さ数十メートルから数百メートルの地下水観測井で地下の温度分布を計測することである。 本年度は関東中央部の埼玉県において6地点の観測井(川口、八潮、三芳、熊谷、戸田、和光)で地下温度調査を実施した。調査深度は平均200mであり、地中熱利用システムのための評価として十分な深度まで測定することができた。測定は分解能0.001Kの温度センサーを用いて、1~2m間隔で温度が平衡状態に達し安定したことを確認して計測値とした。実際にはパソコンと連動するデジタルマルチメータを用いてパソコン上でリアルタイムの温度変動を監視しながら計測した。また和光と戸田については、温度の長期的な振る舞いを計測するためのロガーも設置した。他の地点については、既存研究のデータを収集し、データ整理した。また地中への熱負荷を考えるうえで、地表の熱需要も調べる必要があることから23地点の観測井小屋近傍で大気温度のモニタリングを開始した。今後は、関東中央部だけではなく、その周辺地域に対象地域を広げて既存データの収集や新規の調査を行う予定である。 本研究の主たるモデル地域は、関東平野であるが、地域間の違いを明らかにするため国内では大阪平野、海外ではバンコク平野なども比較地域とし地下の熱環境についてのデータ収集や解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。 初年度は地下温度に関する項目の調査や情報収集を主として計画し、この目的を達する調査を行うことができた。また、既存研究によるデータも十分に収集でき今後の評価に活用する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
地中熱利用システムの熱的影響を評価するうえで、広域的な地下水流動・熱輸送解析を行うことが重要である。次年度は、関東平野全域を対象としてこの解析を行う。関東平野における地下水流動解析については小泉他の既存研究があり、本研究はこれをベースとしたモデルを作成する。ただし既存研究には、熱輸送についての解析項目が含まれていないため、本研究で新たに解析を行う。地下水・熱輸送解析をおこなうためには、基礎データの収集が必要不可欠であることから、今年度前半で①関東平野における地下水位データ(国土交通省や環境省、自治体等)②井戸の揚水量データ(自治体等)等を収集する。また最終年度の評価では社会的な視点から評価を行う予定であることから①社会統計データ(土地利用、人口分布等)②地中熱利用状況調査(環境省)の収集も並行して行う。 次年度後半では、前半で収集した基礎データと今年度取得した地下温度データとを用いて関東平野における広域的な地下水流動・熱輸送解析を行う。 地下温度計測では地中の時系列的な温度変動を捉えるために、引き続き選定した観測井内の温度計測を継続する。また熱需要解析に必要な観測小屋近傍の温度モニタリングのデータ回収とバッテリ交換、再設定も行う。計測は最終年度まで継続させ長期データの取得に努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を推進する中で、海外での成果発表は、ある程度の成果がまとまった段階で実施するほうがインパクトがあるという結論を得たため、このため次年度以降に海外での学会発表等の出張を行うこととしたため、旅費を次年度以降に繰り越すこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
成果発表も研究の進展状況を鑑みながら行う。今後も研究費の計画的かつ適切な執行に努める。
|