研究課題
地中熱利用システムは、地球温暖化対策や都市のヒートアイランドの抑制など環境負荷低減効果があり、政策的な支援もあって今後急速な普及が予測されている。一方、地中の人為的な採排熱による環境への影響も懸念されているが、これまで地下熱環境への評価はほとんどなされていない。本研究では、関東平野を対象に自然状態の地下環境を把握する調査を実施し、これを基に環境負荷を最小化する最適設置法およびシステム普及に伴う地下熱環境の変化を監視するための地下熱監視手法を検討することを目的とした。本成果を活用することにより長期的な都市計画やエネルギー政策の立案に役立つ適切なシステムの普及支援が可能となる。地下温度変化を監視する方法として、地盤沈下観測井などの内部に精密な温度計を設置することでその変化をモニタリングする手法があり、これまで地下温暖化を把握する研究で用いられている。そこでこの方法を地中熱システムによる温度の監視にも活用可能かを本研究で検討した。具体的には数値実験を活用し地中熱利用システムによる熱拡散シミュレーションを行った。この検討には、関東平野で測定した自然状態の地下温度データも基礎情報として活用した。その結果、地中熱システムによる影響は、120日間の運転では熱交換井から数メートルの範囲に留まることが分かった。一般に地盤沈下観測井は熱交換井から数km以上離れたところに位置しているためこの手法で監視することは難しい。そこでこの手法に代わる方法を本研究で新たに提案した。その方法は地中熱交換のU字パイプ内の出入口温度と流量をモニターし、地中へ排熱または採熱を熱源による熱量で監視し、場所ごとに適正な基準を設ける方法である。将来的には無線通信回線を通じて影響を監視するデータセンターへ逐次情報を送信することで広域的な地中の熱環境の監視も可能である。
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