研究課題
本年度においても,環境にやさしく効率の良い環境浄化・資源回収法の構築をテーマに,新規吸着剤の合成と特性評価および重金属吸着の基礎実験,さらに,吸着メカニズムや吸着生成物質の安定性・反応性の解明を目指して理論計算(量子化学計算)を行った。新規吸着剤として,キレート剤(EDTA,EDDS)を層間挿入したハイドロタルサイト(層状複水酸化物),ポリビニルアルコール(PVA)―シリカハイブリット膜,カルボキシメチルキトサンと二酸化ケイ素によるハイブリッド膜,キトサンに架橋剤を導入したエピクロロヒドリンキトサンゲル(EP-Ch)やグルタルアルデヒドキトサンゲル(GA-Ch)等の新規材料を合成して,重金属の回収を試みた。合成した各種材料の特性評価を行った後,これらの吸着剤を使用して重金属の吸着実験を行うとともに,吸着における反応メカニズムの理論的解明を行った。その結果,主として以下のことが明らかになった。(1) キレート剤を層間挿入することによりハイドロタルサイトの金属吸着能力は向上する。また,その効果はEDTAの方がEDDSよりさらに大きい。 (2) PVAとシリカによるハイブリッド膜は,クロムやヒ素の除去に有効であるが,特にアミノ基を官能基として導入させると吸着率の増加が見られる。また導入したアミノ基数を増やすほどさらに効果的である。 (3) カルボキシメチルキトサンと二酸化ケイ素によるハイブリッド膜は,再利用実験において5回程度までは吸着率の大きな低下は見られず有効である。(4) 吸着剤の電荷や吸着質の化学種,および分子の立体配置が吸着効率に重要な影響を及ぼす。
2: おおむね順調に進展している
種々の新規吸着剤を合成して,各種吸着剤の特性評価を行うとともに,研究協力者であるモンゴル科技大学の教員とも連携しながら,重金属等の除去・回収の基礎実験を行い,吸着における最適条件の探索を詳細に行った。さらに,研究協力者である東京大学の研究員が中心となり理論計算(量子化学計算)を行い,吸着メカニズムや吸着生成物質の安定性・反応性についても検討した。上記のように平成29年度内に予定していた研究をほぼ行い,国内外の学会で複数の成果発表を行うとともに,学術論文に計5報発表するなどの十分な成果が得られたので。
平成28年度および29年度に得られた成果や知見に基づき,今後は本研究で創製した吸着剤の実用化に向けた取り組みを行う予定である。具体的には,脱離実験や再生(再利用)実験なども行い,これらの結果や各種吸着剤の最大吸着量の算出や比較を通して,海水,地下水や排水試料等における重金属の除去・回収を検討する。
(理由)購入を予定していた消耗品(ガラス器具および試薬)の一部において,今年度は研究室現有のもので対応することができたので,当該助成金が生じた。(使用計画)上記の消耗品については,次年度の早い時期において購入する予定である。次年度は最終年度(3年目)になるが,消耗品については引き続きコンスタントに購入および使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 6件)
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