研究課題/領域番号 |
16K00601
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
塩見 治久 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (60215952)
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研究分担者 |
塩野 剛司 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (30178850)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ゼオライト / ハイドロタルサイト / イオン交換 / 水質浄化 / リン除去 / アンモニア除去 |
研究実績の概要 |
本年度は,平成28年度研究計画の内,樹脂マトリックス中にゼオライトおよびハイドロタルサイトの作製を目指して,樹脂の種類,ハイドロタルサイトの組成およびゼオライトとの配合比率について検討した.ゼオライトについては,市販の合成ゼオライト(A-3,粉末状,75 μm)を用いた. 層間に塩化物イオン,酢酸イオンまたは安息香酸イオンを含むハイドロタルサイトについて単独でのリン酸イオン除去特性を検討した結果,層間に酢酸イオンを含む場合が最も高いリン酸イオン除去能を示したため,樹脂への混合は酢酸イオン含むものについて検討した. 今回検討した樹脂には,市販のエポキシ樹脂および型取用シリコンゴムを用いた.今回は,ゼオライトとハイドロタルサイトの混合粉末の体積割合を40 %に固定し,樹脂と混合,硬化させた.ゼオライトとハイドロタルサイトの混合比率(Z/H比)は,1/0,0.75/0.25,0.5/0.5,0.25/0.75,0/1とした. リン酸イオン,アンモニウムイオンの除去特性は,リン酸二アンモニウムの0.01 mol/L水溶液 (NH4+:34 ppm,HPO4-:98 ppm)に1時間浸漬後,溶液中のアンモニウムイオン濃度およびリン酸イオン濃度を測定した. 今回用いた試験溶液は,リン酸イオン濃度がアンモニウムイオン濃度に比較して高いため,Z/H比が0.5/0.5以上の時に,アンモニウムイオン,リン酸イオン除去率はそれぞれ,40%および60%程度となった.無機粉体を樹脂と混合する場合,樹脂により表面が被覆され,リン酸イオン,アンモニウムイオンの除去に対して悪影響を及ぼしたものと考えれれる.特にアンモニウムイオンの除去率が低いのはゼオライトの粒子径が大きいためであると考えられる.今後,樹脂との混合割合および無機粉体の粒子径の影響について詳細に検討する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年4月に研究開始予定で申請し,4月の採択決定時には不採択であったが,追加で10月(平成28年10月~平成30年3月,初年度研究費配分:12月9日)に採択された課題であり.平成28年は実質6か月の研究期間であった.また,4月採択時のエフォートを20%と見積もっていたが,他の研究テーマは4月から始まっており,エフォートを最大でも10%確保するのが限界であった. また,平成28年には,ゼオライトおよびハイドロタルサイトが均一に分散した複合体の作製に対して, 樹脂の種類およびハイドロタルサイトの組成の決定および分散性の改善,ゼオライトおよびハイドロタルサイト粉末の粒子径および配合割合の検討,ゼオライトおよびハイドロタルサイト粉末-樹脂複合物の複雑形状体への展開を予定していたが,樹脂とゼオライト,ハイドロタルサイト粉末の混合方法の決定に予想以上に手間取り,リン酸イオン除去能,アンモニアイオン除去能を評価出来る複合体の作製に多くの日数を要した.特に,ゼオライトの粒子径については,市販の試薬をそのまま使用したため,ハイドロタルサイト粒子との粒子径差が大きく,樹脂との均一混合が難しく,余計に時間を消費した大きな原因であると考えられる. 今回は,このような樹脂-無機粉体の複合体が水質浄化材としての可能性を有するかどうかを早急に判断する必要がありそれに時間を消費したため,ゼオライトおよびハイドロタルサイトの粒子径の最適化,無機粉末-樹脂複合体の複雑形状への展開までに至らず,当初予定よりやや進捗が遅れた状態である.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究計画の内,未検討の状態で残っている以下の点について早急に検討する.(1)樹脂中へのゼオライト,ハイドロタルサイト粉末の分散性の改善,(2)ゼオライト,ハイドロタルサイトの粒子径の最適化,(3)ゼオライトおよびハイドロタルサイト粉末-樹脂複合物の複雑形状体への展開. (1)については,平成28年度の検討で,樹脂と無機粉体の濡れ性が悪いため,均一な混合が極めて困難であることが判明している.そのため,無機粉体表面の改質,混合方法の検討を行い,より均一な分散状態を得るための方法を確立する.(2)については,ゼオライトの粒子径の影響について重点的に検討する.具体的には機械的な粉砕により粒子径を変化させ,樹脂との混合性,水質浄化特性を検討し,最適な粒子径を決定する.(3)については,ハニカム状,パイプ状成形体の可能性について検討する. また,メカノケミカル処理した水酸化アルミニウムあるいはメタカオリンおよび水ガラスを主原料とするゼオライトAの固化体の作製において,ハイドロタルサイトを添加し,ゼオライト-ハイドロタルサイト複合固化体の作製条件を検討する.ここでは,ゼオライト前駆体スラリーとハイドロタルサイト粉末との混合条件が非常に重要になるため,①超音波分散,②ボールミル混合,③撹拌型ミキサーでの混合を検討する.ハイドロタルサイトの組成については,ゼオライト前駆体スラリーのpHが高くなるため, Mg-Al系,Ni-Al系ハイドロタルサイトの2種類を選択し,次年度の検討項目である,ゼオライト,ハイドロタルサイトの再生も考慮に入れ,層間に塩素イオンを含むものについて検討する.なお,ハイドロタルサイトの混合割合は,Z/H比が1/0,0.75/0.25,0.5/0.5,0.25/0.75,0/1となるようにし,最適比率を調査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の採択が,半年遅れの10月であったことより,エフォートを当初予定した20%を確保できず,最大でも10%を確保するのが限界であった.また,研究期間が6か月であり,予備的な実験を含め,研究室で保有する試薬,器具を一部使用することで,来年度からの研究に有用となるデータの収集は可能であった.また,予想より検討が長引いた項目があったため,本年度の研究計画の一部は次年度への持ち越しとなったためその費用も繰り越すほうが,次年度の研究においても有利と考えた.そのため,本年度に配分された研究費を次年度の研究費と合算して使用するため,次年度に繰り越すこととした.
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次年度使用額の使用計画 |
設備備品としては,平成28年度に購入予定で,未購入の研磨機(アキュラ製・プラトFR-M1),ダイヤフラム型真空ポンプ(株式会社KNFジャパン製・N840.3FT.18),消耗品としてはゼオライト合成に使用する耐圧ステンレス容器,pH電極,ダイヤモンドカッター替え刃および原料,試薬の購入に使用する.今年度は,昨年度未検討項目(樹脂-無機粉末複合体関連)と,ゼオライト-ハイドロタルサイト複合固化体関連の研究を並行して行うため,両検討項目のための原料および試薬,測定用消耗品を購入する.なお,研究開始時期が通常より6か月遅れていることを考慮して,平成29年度の交付額(1,100,000円)については,研究の進捗状況によっては,その半額を次年度に繰り越すことも視野に入れて予算執行する.
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