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2016 年度 実施状況報告書

FeS2/H2O/O3反応系における難分解有機化合物の酸化分解

研究課題

研究課題/領域番号 16K00606
研究機関国立研究開発法人産業技術総合研究所

研究代表者

原 淳子  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 主任研究員 (40374996)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード土壌汚染 / 現位置浄化技術 / 化学的酸化分解 / 芳香族化合物
研究実績の概要

本課題は、二硫化鉄を酸化剤として用いて芳香族化合物の化学的酸化分解能を評価し、分解機構の解明、現地で用いることの反応阻害要因および安全性評価の実施を目的としている。本年度は、本手法で対象汚染物質を分解する際、その中間生成物として蓄積の見込まれるベンゼンおよび酢酸を含む低分子有機酸を用い、分解機構の解明を進めた。また、酸化促進剤を用いた場合の分解機構の変化についても検討を進め、以下の知見を得た。
・二硫化鉄/水のみの反応系において一週間で9割以上のベンゼンが分解し、そのうち55%は二酸化炭素まで完全分解した。さらに酸化促進剤を加えた反応系ではオゾン、過酸化水素いずれを使用した場合も99%以上のベンゼンが分解し、過酸化水素では70-75%、オゾンでは98%とCO2までの完全分解率が上昇した。
・本手法によるベンゼンの酸化分解は、オレフィン化合物を介して、主にグリオキシル酸、シュウ酸、ギ酸を経由する経路とマロン酸、酢酸を経由する経路に分かれ、両経路を経てCO2まで完全分解する機構で進行することが明らかとなった。
・酸化材を添加した反応系では、シュウ酸を経由する経路が優勢となり、特に過酸化水素を用いた反応系ではシュウ酸の蓄積量が無添加時よりも増加することが明らかとなった。また、促進剤効果による反応促進経路の変化は熱力学的な計算結果に裏付けられることを検証した。
・ベンゼン分解速度の全容は、検出された有機酸の反応速度を用いた数値計算結果と大凡合致した。また、二硫化鉄表面で汚染物質の酸化分解に寄与するラジカル発生種を特定し、その定量に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本課題の実施に必要な実験・分析環境の立ち上げが滞りなく進み、今年度予定した中間生成物の分解機構の解明に着手し、結果を出すことができた。特に、汚染物質として有機塩素化合物や有機フッ素化合物に比べて更に高い乖離エネルギーを要する芳香族化合物、カルボニル基を有する有機酸に対して、天然に広く分布する二硫化鉄が分解能を有すると実証できたことは大きな進展である。本成果は環境中での汚染物質拡散防止、汚染物質の滞留時間を評価する上で重要であり、次年度以降の研究成果により、更に明確な検証ができると予定している。
また、年度後半には、ターゲットとする芳香族系化合物の実験を開始し、分解機構の解明に必要なラジカル種の特定を開始するなど、概ね順調に進行した。

今後の研究の推進方策

次年度に計画した芳香族化合物の分解機構の解明を進めると共に、現位置浄化時における環境阻害要因の検討を進める。また、本年度の研究により、実験条件の違いによる系内の酸化剤分散状態の違いが顕著であることが明らかとなっており、反応による酸化材自体の状態変化およびフロック現象について検討を進め、実環境での透水性変化への影響評価を新たに進める必要があると予定している。
安全性評価に関しては、反応水弱酸性化による環境影響を検証し、土壌における緩衝効果が十分に見込まれない場合は、必要に応じて酸化剤による汚染物質分解後の土壌環境修復についての検討を行っていく。

次年度使用額が生じた理由

ラジカル反応を測定するESR分析は、外部機関の装置を利用しており、その装置の秋状況等から年度内に予定測定分までを含むことが困難な状況であった。4月以降、早々に分析を実施することになったため、3月末はその分の予算を繰り越すこととなった。

次年度使用額の使用計画

予算繰越分は、ラジカル発生種の同定・定量を行うためのESR分析費用として使用する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Evaluation of natural degradation of persistent organic chemicals in acid sulfate soils distributed in a coastal area2016

    • 著者名/発表者名
      Junko Hara, Yoshishige Kawabe. Yasuhide Sakamoto
    • 雑誌名

      International Journal of Environmental Science and Development

      巻: 7 ページ: 441-444

    • DOI

      10.7763/IJESD.2016.V7.816

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 酸化促進剤を用いた二硫化鉄によるトルエン分解機構の解明2017

    • 著者名/発表者名
      原 淳子
    • 学会等名
      資源素材学会
    • 発表場所
      千葉工業大学
    • 年月日
      2017-03-27 – 2017-03-29
  • [学会発表] 二硫化鉄を用いた促進的酸化分解法によるベンゼン・酢酸の分解特性2016

    • 著者名/発表者名
      原 淳子
    • 学会等名
      環境工学研究フォーラム
    • 発表場所
      北九州国際会議場
    • 年月日
      2016-12-06 – 2016-12-08
  • [学会発表] 現位置土壌汚染浄化を目指した促進的酸化分解法によるベンゼン・酢酸の分解特性評価2016

    • 著者名/発表者名
      原 淳子
    • 学会等名
      日本地下水学会
    • 発表場所
      長崎新聞文化ホール
    • 年月日
      2016-10-20 – 2016-10-21
  • [学会発表] FeS2/O3/H2O反応系におけるベンゼンの促進的酸化分解機構に関する予察的検討2016

    • 著者名/発表者名
      原 淳子
    • 学会等名
      資源素材学会
    • 発表場所
      岩手大学
    • 年月日
      2016-09-13 – 2016-09-15
  • [学会発表] Degradation products and the ecological risk of persistent chlorinated organic compound in potential coastal acid sulphate soils2016

    • 著者名/発表者名
      Junko HARA
    • 学会等名
      Ecosummit2016
    • 発表場所
      Le Corum, Montpellier, France
    • 年月日
      2016-08-29 – 2016-09-01
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2023-03-16  

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