グリシジルメタクリレートとエチレングリコールジメタクリレートとを用い,懸濁重合法により親水性のメタクリレート系樹脂を調製した。篩を用いて分級した後,粒径,比表面積,細孔径,細孔容量などの樹脂基本特性を測定した。この樹脂にエーテルアミン(ビス(2-エトキシエチル)アミン)を導入した。比較のために,類似構造を有するアルキルアミン(ジアミルアミン)を導入した樹脂も調製した。得られた樹脂を元素分析に供し,窒素含有率よりエーテルアミン,アルキルアミン導入量を決定した。 各樹脂を純水に一定時間浸漬し,一定減圧度でろ過して湿潤重量を測定した。次いで,この樹脂を恒量になるまで真空乾燥し,乾燥重量を測定した。これらの差から,樹脂の含水率を求めたところ,エーテルアミン型樹脂の方がアルキルアミン型樹脂に比べ水を保持しやすいことが明らかとなった。 各樹脂の元素分離の基礎能力を明らかにするため,各樹脂を固相抽出カートリッジに充填し,21種の元素を含む水溶液を用いた流通式実験により元素捕捉におよぼす溶液pHの影響について検討したところ,エーテルアミン型樹脂,アルキルアミン型樹脂の両者に顕著な差は認められず,典型的なアミン型樹脂の元素捕捉挙動を示した。また回分式実験を通じて各樹脂の貴金属元素捕捉について検討したところ,いずれも金,白金,パラジウムを捕捉できる能力を有していた。得られた結果から,エーテルアミン型樹脂とアルキルアミン型樹脂との水溶液中元素の捕捉能力は,ほぼ同等であることが明らかとなった。 次に,数種の有機溶媒に酢酸パラジウムを溶解し,これらに乾燥樹脂,湿潤樹脂をそれぞれ加え,撹拌して各樹脂のパラジウム捕捉量を検討したところ,アセトニトリル,酢酸エチルではほとんど差は見られなかったがヘキサン,キシレンではいずれの樹脂においても乾燥樹脂より,湿潤樹脂の方が,捕捉量が大きくなる傾向にあった。
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