研究課題
希少金属資源は先端産業の材料として不可欠であり、金属資源に乏しい日本では、確保が重要である。都市鉱山は金属資源を確保する重要な源であるが、使用済み小型家電には多種金属が極微量ずつ含まれて、各金属の個別回収は容易ではない。湿式精錬法のうち、溶媒抽出法は汎用性が高く、大量処理が可能な優れた技術であるが、抽出性能は抽出試薬の性質に大きく依存し、試薬の選択が重要である。本研究者は特殊な環構造や三脚状構造を有する抽出試薬の開発を長年行ってきた。近年、環状のカリックス[4]アレーンのある誘導体を用いた際に、環構造がリチウムイオンに適合していないにもかかわらず、適合するナトリウムよりも選択性が高い現象を見いだした。これは、抽出に水分子を介して安定化する現象によるのではないか、という仮説を立てた。この仮説を立証することで、「抽出試薬の配位子とその未脱水和水との水素結合を利用して抽出する」という従来にない新たな分子設計概念を確立することができる。具体的には、トリプロピルーモノ酢酸型とテトラ酢酸型カリックス[4]アレーンを合成し、一連のアルカリ金属イオンの抽出充填に関する検討を行った。アルカリ金属の抽出に伴い、カールフィッシャーによる水分量測定、IRスペクトル・1H-NMRスペクトル・7Li-NMRなど各種スペクトルによるピークシフト情報を駆使することで、充填率との相関により、ローディングに伴って抽出された水分量を算出した。その結果、トリプロピルーモノ酢酸型カリックス[4]アレーンでは、環構造はひずんで小さなリチウムに不適合な環構造を有しているにもかかわらず、水分子を介して安定な錯体構造を形成していることが示唆された。結晶構造については明らかにすることができなかったが、上記の従来にない新たな分子設計概念を示すことができた。
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