研究課題
本研究では,廃棄ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を粘土と混合・焼成して得られるガラス繊維強化多孔質セラミックスの高強度,高吸水性,高透水性の特徴を活かして,(1)ヒートアイランド対策としての保水性舗装ブロック,(2)河川水等の水環境の保全を目的とした濁水・汚水浄化用濾過材の開発を行った.(1)保水性舗装ブロックの開発まず,舗装ブロックとしての強度の基準を満足すると共に高い吸水率を有するセラミックスの製造条件を明らかにした.次に,粘土とGFRPから作製したセラミックスの蒸発熱による輻射熱の低減効果について検討するために,乾燥状態および吸水状態の試験片に赤外光を照射した場合の表面温度の測定を行い,モルタル試験片および粘土のみから作製したセラミックス試験片の表面温度と比較した.その結果から,吸水容量の大きい本研究のセラミックスは,蒸発熱により他の試験片よりも長時間表面温度を低く抑えることができることを明らかにした.また,セラミックスの蒸発熱による温度低減効果について検討するために,赤外光を照射している試験片について水分の蒸発速度を測定し,試験片から吸収される蒸発熱を推定した.さらに,この蒸発熱の値を用いて,試験片の温度変化についての有限要素解析を行い,セラミックの蒸発熱による温度低減性能を定量的に明らかにした.(2)濁水・汚水浄化用濾過材の開発まず,廃棄GFRPの混合率,GFRPの粉砕粒度,及び焼成温度を変えることにより様々な気孔率および気孔径を持つセラミックス濾過材を作製した.次に,透水試験および粒径の異なるカオリンやシリカゲルを含む模擬濁水の濾過試験を行い,セラミックスの濁度低減性能について検討した.また,実証試験として,河川水の濾過試験を行った.その結果,高い透水性と濁度低減性能を併せ持つ濾過材が作製できることがわかった.
2: おおむね順調に進展している
・舗装ブロックとしての強度の基準を満足すると共に高い吸水率を有するセラミックスの製造条件を明らかにした.・廃棄GFRPと粘土を混合・焼成したセラミックスを保水性舗装ブロックとして用いた場合の日射熱低減効果を定量的に明らかにした.・本研究成果をジャーナルに公表できていること.・廃棄GFRPと粘土を混合・焼成することにより,良好な透水性と濁度低減性能を併せ持つセラミックス濾過材が作製できることを明らかにした.・同様に,本研究成果をジャーナルに公表できていること.
(1)ゲリラ豪雨対策としての透水性舗装ブロックの開発本研究のセラミックス製造方法では,粘土質マトリックスがガラス繊維により強化されるので,極めて高い気孔率と大きなサイズの気孔を有するセラミックスを作製できる.そのため一部のセラミックスは良好な透水性も示す.このことから,セラミックスをゲリラ豪雨対策としての透水性舗装ブロックにも十分に適用できるものと考えられる.そこで,ガラス繊維を40%から60%(mass%)含有するGFRPを用いて,GFRPの混合率,粒度および焼成温度を変えることにより様々なセラミックスを作製し,透水性舗装ブロックの曲げ強度,圧縮強度および透水性の基準を満たすセラミックスの製造条件を明らかにする.(2)水浄化用濾過材の開発本テーマでは,セラミックスの高い透水性を活かして,生活排水や工場排水等の汚水を浄化できる濾過材の開発を目指している.これまでに,模擬濁水や河川水の濾過試験を行うことにより,セラミックスを濁水濾過材として利用できることを明らかにした.今後は,セラミックスの水質浄化材としての利用の可能性について検討する.まず,メチレンブルーの吸着試験および濾過試験を行い,セラミックスの色素吸着性能について検討する.現在,数種類のセラミックスについて,メチレンブルーの濾過試験,および粉末試料による吸着試験を実施している.その結果から,廃棄GFRPの混合率が高くなるについてメチレンブルーの吸着性能が高くなることを確認している.今後,ろ過前後のメチレンブルー水溶液中の様々なイオン濃度の測定や表面電位の測定を行い,セラミックスの色素吸着のメカニズムを明らかにする.また,紛体試料,ディスク状試験片およびボール状試験片を作製し,色素吸着性能が高く,かつ濾過の処理速度の大きい試験片形状についても検討する.
セラミックスをろ過材として用いた場合の濁度低減性能に関する研究については,一定の成果が得られたので,早期にセラミックスの水質浄化性能の検討に移行した.そのため,予算の前倒しを行い,H29年度に導入を予定していた吸光光度計をH28年度から導入し,各種水溶液に含まれる化学成分(イオン)の測定ができるようにした.この前倒し予算には,業者に依頼する化学分析費も含んでいたが,前倒し予算の申請時期が遅く,H28年度内に一部支払いができなかった.以上の理由から,次年度使用額が生じた..
研究目的に変更はなく,研究計画についても,濁水濾過に関する研究が早く終わり,水質浄化に関する研究に若干早く着手しただけである.したがって,上記の「理由」に記載したように,H28年度に予算の前倒しを行っているので,今後の予算の使用計画に大幅な変更はなく,研究目的を達成できるものと考えられる.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Mechanical Engineering Journal
巻: 3 ページ: No.4, 1 - 12
10.1299/mej.16-00078
Environmental Earth Sciences
巻: 75 ページ: 1135-1-11
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