研究実績の概要 |
本研究では産業廃棄物から有価金属である金をリサイクルし、環境保全および資源の有効利用を目指すと共に、回収した金をナノマテリアルとして期待されている中空ナノ粒子として資源化することを目的としている。 初年度は、金イオンAu(III)に選択性を示す抽出剤を新たに合成し、液液抽出実験によるAu(III)の抽出分離を検討した。具体的には、抽出剤としてジグリコールアミド酸型酸性抽出剤N,N-dioctyldiglycolamic acid (DODGAA)、ジチオグリコールアミド酸型酸性抽出剤N,N-dioctylthiodiglycolamic acid (DOTDGAA)、リン酸化アミド型酸性抽出剤(2-(dioctylamino)-2-oxoethoxy)methylphosphonate (DOAOBPA)、ジアミド型酸性抽出剤tetra(n-octyl)nitriloacetic acid diacetoamide (TONTADA)、ジグリコールアミド型中性抽出剤N,N,N',N'-tetra(n-octyl)diglycolamide (TODGA)の計5種を用いたところ、次のような抽出挙動が観測された。 1. DODGAAはAu(III)を最大で50%程度しか抽出できないが、エーテル酸素を硫黄に置換したDOTDGAAはソフトドナー性によりAu(III)との相互作用が強くなり、Au(III)を定量的に抽出することが可能となった。 2. DOAOBPA、TONTADA、TODGAは水相の酸性度が高いほどAu(III)の抽出率が増加し、定量的な抽出が可能であった。特にTONTADAはAu(III)に対して極めて高い抽出能を示した。一方、DOAOBPAおよびTODGAは他の白金族系金属に比較して高いAu(III)選択性を示した。
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