研究実績の概要 |
本研究では、使用済み太陽電池から温和な条件下で有用資源を回収するため、架橋化EVAの可溶化反応の速度定数や活性化エネルギーおよび反応機構を検討した。 初めにEVASKY S11(ブリジストン社製)を150~160℃で30分間加熱し、架橋化率83~92%の架橋化EVAを作成した。可溶化実験では、40メッシュのステンレス製のカゴに入れた架橋化EVA試料を所定の温度に加熱した溶媒に挿入し、一定時間経過後にカゴを引き上げて反応を停止させた。可溶化率は、回収した試料を70℃で12時間減圧乾燥して溶媒を十分除去した試料重量から算出した。 架橋化EVAに水酸化カリウムを添加して1-ヘキサノール中157℃で60分間加熱すると架橋化EVAの可溶化率は水酸化カリウムの濃度に比例して増加し、架橋化EVAに対して25wt%以上の水酸化カリウムを添加するとほぼ完全に可溶化した。架橋化EVAを2-エチル-1-ヘキサノール中157℃で加熱すると、1-ヘキサノールを用いた場合よりも早く可溶化され可溶化反応速度は溶媒の性質も大きく影響することが明らかにされた。2-エチル-1-ヘキサノールの沸点184℃では、架橋化EVAの可溶化率は15分で90%以上に達した。可溶化初期では、可溶化率の対数値ln(1-X)は可溶化時間に対して直線的に減少し、疑似一次反応と見なすことができた。可溶化速度(v)は、水酸化カリウム濃度に対して直線的に増加し、可溶化反応速度をv=k[EVA][KOH] (1) (可溶化速度定数(k),架橋化EVA濃度[EVA]、水酸化カリウム[KOH])で表すことができることを明らかにした。可溶化反応の活性化エネルギーから、架橋化EVAの可溶化は1-ヘキサノール中ではエステル交換反応および引き続く水酸化カリウムによる鹸化で、2-エチル-1-ヘキサノール中では主に鹸化で進行すると考えられる。
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