研究課題/領域番号 |
16K00622
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
坂田 昌弘 静岡県立大学, 食品栄養環境科学研究院, 教授 (20371354)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 亜鉛 / カドミウム / 亜鉛同位体比 / 堆積物コア / 水質汚染 / 発生源 |
研究実績の概要 |
1.Zn同位体比に関する発生源データベースの構築 Zn同位体比に基づくZnの汚染源推定に資するため、水域におけるZnの汚染源となる可能性がある各種粉じん(石炭灰、ごみ焼却灰、自動車・道路粉じん)と下水処理水について、Zn同位体比およびZn・Cd濃度を測定することにより、それらの発生源データベースを構築した。その結果、自動車・道路粉じんとごみ焼却灰にはZnが著しく濃縮しており、特に前者のCd/Zn濃度比は他の粉じんや下水処理水と比べて特異的に小さい値であることがわかった。このことから、Cd/Zn比はZnとCdの発生源指標として利用できる可能性がある。一方、石炭灰中のZn・Cd濃度は低く、非汚染土壌の値と大差がなかった。 次に、各種粉じん試料のZn同位体比を測定した結果、Znの汚染源となる可能性があるごみ焼却灰(0.12±0.02‰)、自動車・道路粉じん(0.06±0.12‰)および下水処理水(0.12±0.09‰)は、その汚染源とはならない石炭灰(0.37±0.23‰)や非汚染土壌(0.25±0.17‰)に比べて小さい同位体比を示すことがわかった。このことから、Znが人為的汚染の影響を受けると、その同位体比が小さい値にシフトすることが予想される。
2. 日本国内の人為発生源に由来するZn同位体比の歴史トレンド解析 現在、2003年12月に東京湾で採取した堆積物コアについてZn・Cd濃度の測定およびZn同位体比測定のための前処理(イオン交換分離)を行っている。堆積物コア中のZnとCdは、公害対策が本格化した1970年代以降においても濃度が高く維持されており、未だに汚染が継続していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東京湾の堆積物コアについては、平成28年度内にZn同位体比を測定することができなかったが、前処理はほぼ完了していることから、研究計画に沿っておおむね順調に進展しているとみなすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、東京湾の堆積物コアを対象にして、平成28年度に得られたCd/Zn比およびZn同位体比の発生源データベースに基づくZn汚染源の解析を行う。また、長崎県平戸市で捕集した大気エアロゾル試料について、Zn同位体比およびZn・Cd濃度を測定する。それらの値と、後方流跡線解析から得られたエアロゾルの捕集期間中にエアマスが当該地点に到達するまでの経路(エアマスが通過したエリア)との関係を明らかにする。この結果から、アジア大陸からのZn・Cdの越境輸送の影響を評価する上で必要なデータベース(Zn・Cd濃度、Cd/Zn比、Zn同位体比)を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由として、平成28年度中に実施する予定であった東京湾堆積物コアの亜鉛同位体比や関連する化学成分濃度の測定が未実施であったため、これに必要な物品費や旅費を使用しなかったことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(差額分)は、上記の未実施項目の測定に使用する。また、平成28年度末に四重極型ICP質量分析装置が故障したため、その修理費に充てたい。
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