日常生活環境で生体に対し有害な騒音の少ない音環境を創出することを目標に、人工的に作成した音刺激に対する聴取者の脳機能計測を行い、脳機能変化を引起こすいくつかの騒音の音響特性パラメータを抽出した。20人の研究協力者の音聴取時の生体反応を測定する一連の実験において、脳波事象関連電位成分P50、脳波周波数成分α2帯域パワー、及び聴取者の音への動作反応時間に影響を及ぼす連続音の音響特徴が確認できた。特に、連続する音刺激のがPink noiseのとき、他の音刺激よりP50電位の低下がなく一次感覚受容されやすいことを確認し、脳波α2帯域パワーはPink noise及び純音で減少し、基幹脳活性が低下する可能性が示され、さらに、純音は動作反応時間を遅らせる影響を示した。一次感覚抑制の継続と基幹脳活動の抑制は、統合失調症や統合的な感覚処理、注意機能などと関係があり、騒音曝露期間の脳機能への影響が生体に悪影響を及ぼすことが考えられる。 また、人工環境音を模した音刺激の音響パラメータを動かすことにより、脳情報処理課程が変化し脳機能への影響も変化することを示すため、実際の環境音の音響パラメータを抽出し、その変化と脳波による脳機能解析を同時に実施するための実験環境の構築を行った。日常日存在する一定間隔の連続刺激音を含む機械騒音と含まない自然環境音で構成した環境音聴取時に、自然環境音脳波ではα2帯域パワーが増大する一方、機械騒音聴取では減少することより、環境音を構成する周期的音量変化を持つ音が深部脳活動を低下させる可能性があることが示唆された。
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