研究課題/領域番号 |
16K00630
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
今村 彰生 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00390708)
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研究分担者 |
山中 裕樹 龍谷大学, 理工学部, 講師 (60455227)
丸山 敦 龍谷大学, 理工学部, 准教授 (70368033)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境DNA / 種特異的検出系 / 繁殖遡上 / 遡上限界 / 生息ポテンシャル |
研究実績の概要 |
環境DNAによるハスの種特異的検出系の開発を実施した。リアルタイムPCRを用いて、近縁種の組織片も合わせて分析し、ハスのDNAのみが増幅されることを確認した。これによって、環境水からの分析手法が確立された。また、その報告論文がEcological Researchに受理された。 ハスの繁殖遡上について、環境DNAおよび目視により詳細なデータが取得され解析された。その結果、種特異的な環境DNA解析の結果に偽陽性や偽陰性がみられず、目視で陰性だった地点でも陽性を検出しうることが示された。繁殖河川での遡上限界が琵琶湖岸から約3500mであることが示された。これらの点については、東アジア生態学連合の大会にて学会発表され、さらには原著論文の審査中である。 琵琶湖北西岸でのハスの生息条件について、375地点でのデータ解析が為された。各地点での環境条件ごとにハスの生息確率が算出され、琵琶湖北西岸でのハスの生息ポテンシャルがマップとして視覚化された。環境変数の中でも、湖底の影響が大きく、砂質または礫質の地点において、ハスの生息確率が高まった。また、琵琶湖の南湖と北湖の顕著な違いが示された。この成果については、保全生態学研究誌に受理され、現在印刷中である。 繁殖遡上してくるハスの体サイズや齢構成について、解剖学的に検討を加えた。その結果、先行研究の報告内容に比べて、齢構成に高齢化の傾向が見られること、若い個体の遡上時期に遅れが見られることなどが判明した。この点については、継続して検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハスに特異的な検出系が確立され、論文が受理されている。 特異的な検出系について、その手法が環境水からのデータ収集に適用され、目視との整合性が確認されている。 ハスの生息状況の詳細について検討され、北西岸を網羅しただけでなく、環境条件さえ分かればハスの生息確率を計算しうる統計モデルを確立している。 ハスの減少要因について、直接的な究明はなしえておらず、今後の検討が必要である。精査した調査計画に基づき、2018年度の調査に取り組む予定である。 以上、未解明の部分も残すものの、プロジェクト全体の推進に必要な情報が適切に積み重ねられている。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度を迎えるため、研究プロジェクト全体の成果まとめに注力する。 ハスの直接的な減少要因の絞り込みを進め、その検証の実施を最優先とする。そのために、未成魚から成魚にいたる齢構造や性比などの解剖学的検討、琵琶湖の流入河川の現状と繁殖遡上の阻害の有無や実態の定量的把握などに取り組む。 成果については、迅速に論文化することを念頭におき、短期的な研究計画の修正と実行に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
龍谷大学執行分について、環境DNA解析などにおいて、執行の経済的効率化が図られたためである。 次年度は、解析実行において、試料数を増やすために予算を用いる予定である。
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