最終年度の成果を列挙する。研究分担者である山中を筆頭著者としてYamanaka et al (2018)として、環境水からハスのDNAを種特異的に検出するための方法論が公表された。これは、今後のハスの研究でも応用されうる、重要な基礎研究の成果である。これを踏まえ、研究分担者である丸山を筆頭著者として、Maruyama et al (2018)としてecology and Evolutionに公表した。これは、上述の種特異的なハスの環境DNAの検出系を利用して、ハスの繁殖遡上について、詳細に調査したものである。その成果として、ハスの遡上時期が捉えられた。また、遡上期間内の繁殖行動がどの地点、どの時期に集中しているのかを捉えた。この研究では、環境DNAと並行して潜水目視も実施しており、環境DNAでの偽陰性の可能性が棄却され、潜水目視で発見できない場合でもハスを検出可能であることが示された。 研究機関全体を通じて、論文4報を公表したが、当初の研究計画にあった九州での侵入地域との比較検討については進捗が思わしくなかった。この理由としては、侵入先の複雑な水路網の全ての地点でハスが定着していること、その一方で別の研究チームによって既報のとおり、栄養状態の悪化は否めず、つまり定着しているとはいえ個体数やバイオマスの増加傾向を捉えることができなかったこと、が挙げられる。 琵琶湖及び九州のいずれについても安定同位体分析を実施したが、魚食性から昆虫食の割合が増えるという食性シフトの傾向は見られたが、それ以上の追究はできなかった。 本研究全体の成果として、今村(2018)によって示したように琵琶湖内でのハスの偏在は明らかであり、琵琶湖での現象が外来魚だけによるという仮説は棄却されたといえる。今村(2018)とMaruyama et al (2018)が示唆するのは、繁殖河川の悪化である。
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