研究課題/領域番号 |
16K00634
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 熱帯モンスーン林 / 水田開墾 |
研究実績の概要 |
世界中で淡水湿地の環境改変がすすむなかで、湿地生物の生息地としての水田環境の重要性が指摘されている。本研究の目的は、東南アジアに広大な面積を占める水田において、農業慣行によって維持される水田環境と野生草本植物の生活史との関係、周囲の土地利用と比較した水田の外来植物相、水田の野生草本植物を移植・栽培する事例を調査し、人為のもとでの植物多様性維持機構を解明することである。研究2年目となる2017年度には、2018年3月12日から19日まで、ラオス中部ビエンチャン県ナーサイトン郡において、水田地帯に残された熱帯モンスーン林と、その周辺の灌木林や草地の植生調査を主に行った。本調査地では、過去に用材の伐採や軍事訓練、貯水池建設のための土砂採集などが行われていた。調査の結果、中高木層にはムクロジ科Nephelium属、マメ科Dialium属、クワ科Artocarpus属、ミソハギ科Lagerstroemia属など、低木層にはクワ科Streblus属、サクラソウ科Ardisia属などが記録された。外来植物は、灌木林や草地、湿地において、オジギソウ、Mimosa pigra、ヒマワリヒヨドリ、カッコウアザミ、Sida spp.などが確認された。これらは全て、周囲の水田の畦畔にも生育していた。オジギソウは古い時代に移入し定着した可能性が示唆された。またMimosa pigraは水域に沿って分布を拡大していた。ビエンチャン平野にかつて広がっていた熱帯モンスーン林の大部分は、用材や薪炭材の伐採と水田開墾により姿を消したが、水田畦畔に残された樹木が、かつての林地の名残りをとどめていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価される。2017年度の研究計画は、ラオス北部の亜熱帯林帯に位置するフアパン県サムヌア郡と、ラオス中部の熱帯モンスーン林帯に位置するビエンチャン県各郡において、農業慣行によって維持される水田環境と野生草本植物の生活史との関係、周囲の土地利用と比較した水田の外来植物相、水田の野生草本植物を移植・栽培する事例を調査することであった。2017年度には、ビエンチャン県ナーサイトン郡において、水田植生と、水田周囲の林地や草地の植生とを比較分析することを中心テーマとした。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度以降は、2017年度までの調査項目の継続調査を行う。特にこれまでの調査と異なる時期のデータを収集するため、2018年度には5月の現地調査を予定している。また水田の野生草本植物の持続的利用・管理をはかるため、それらを移植・栽培する事例にも焦点をあてる。比較調査地として予定していたラオス南部を、ベトナム南部メコンデルタに変更し、メコン川流域全体に視野を広げて、水田草本植物の調査を行う。
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