研究の最終年度にあたる本年度は,(1)研究対象範囲に残存する森林パッチ(主に,東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた津波による撹乱以前からパッチ状に分布していた屋敷林や社寺林,公共施設の緑地,ならびに,津波によって分断化された海岸林)の林冠層およびその下層を構成する樹種の再調査と,(2)二時期目の森林パッチ図作成のための再調査,(3)本年度までに得られたデータの取りまとめを目的とした補助調査・解析を実施した.(1)については,昨年度までに踏査した全ての森林パッチのうち,林冠構成種についての確認が必要なパッチの踏査と,下層に出現した実生の種の確認,ならびに,枯死や伐採による欠損状況について記録した.これまでの調査結果と同様に,林冠層に確認できない樹種の実生が出現した森林パッチが僅かであるものの確認されたことから,森林パッチ間の樹種の移動・分散が生じていることが示唆された.(2)については,空中写真では確認できない一部の森林パッチの状況について,ドローンを用いて出現種や森林パッチの形状を観測した.これらの森林パッチは主に残存した海岸林由来のものであったため,ドローンによる観測を実現できた.これらのデータを用いて二時期目の森林パッチの分布図を作成中である.なお,津波による塩害で枯死した樹木の伐採や,復旧工事に伴う土地被覆の改変などによって,森林パッチ面積の減少や分布の変化などが確認されている.(3)については,昨年度までに投稿した論文の査読結果を受けての修正等を経て,論文が発行されたほか,学会発表等を実施した.
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