研究課題/領域番号 |
16K00641
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
竹内 やよい 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (50710886)
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研究分担者 |
鮫島 弘光 公益財団法人地球環境戦略研究機関, その他部局等, リサーチマネージャー (80594192)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生態系サービス / 哺乳類 / 水資源 / 生物多様性 / マレーシア / 断片林 / ラタン / 樹木 |
研究実績の概要 |
最終年度にあたる本年度は、これまでの生物多様性の調査のデータを用いて、過去の森林率の現在の種多様性への影響ついて統計解析を行った。樹木においては種の形質が、森林率への応答への時間に関係しており、森林断片化のタイムラグ効果があることが示唆された。 これまでの調査により、以下のような結果を得た。 ①生物資源:保存林では、樹木種、動物種の両方でアルファ多様性とベータ多様性ともに高く、絶滅危惧種も多く保持しているため、地域の生物多様性の貯蔵地としての役割があるといえる。一方、樹木種については、断片林の影響が顕在化するまでタイムラグが存在することが示唆された。住民によるラタンの利用については、聞き取り調査の結果、農村部では、周囲の森林からラタンを採取しており、利用する種多様性も高かった。一方都市部では、周囲からの採集量、利用する種数ともに農村部より低いことが分かった。都市部では、市場で加工ラタンなど代替品への転換が進んでおり、このような代替品の存在や市場へのアクセスの利便性により周囲の森林からの供給サービスの利用が減少することが考えられた。 ②水資源:地域住民は、伝統的には村の大河川の水を水源として利用している。聞き取り調査の結果、現在は多くの村(14/16村)に、保存林を水源とする水道管が存在していた。地域住民は、上流部の開発によって大河川が汚濁していると認識しており、保存林からの水の方が汚濁が少ないため安全であると考え、保存林の水をより利用していた。開発に伴う大河川水の水質の悪化により、代替である保存林の水源の需要が高まったと考えられる。 これらの結果から、開発の影響により、生物資源はサービスの利用量が低下し、水資源はサービスのソースの変化が起きていることが明らかになった。これらの変化をもたらす要因として、社会環境とサービスの代替品の存在が直接的要因である可能性が示唆された。
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