研究実績の概要 |
本研究は、農山漁村の活性化および環境保全の推進の観点から、地理情報システムを活用し、農業地域における太陽光発電の導入可能量を明らかにすることを目的とする。農業地域の最重要課題のひとつである耕作放棄地の有効利用に焦点をあてる。 首都圏1都7県の耕作放棄地における太陽光発電の導入可能量を分析した。前提条件として、土地の地形(最大傾斜角度・最大傾斜方向)、法規制の開発不可地域(自然公園地域・自然保全地域)、耕作放棄地と送電線の距離を選定材料とした。2015年の農林業センサスを用いて、首都圏の農業集落単位の耕作放棄地面積を求めた。グリッド単位の農用地率の組み合わせによりグリッド単位の耕作放棄地面積を求めて、耕作放棄地面積の分布を詳細に示した。これに面積あたり太陽光発電定格容量を掛けることにより賦存量を算出した。最大傾斜角度20度未満かつ最大傾斜方向が南向きの条件を満たし、自然公園地域・自然保全地域を除いたグリッドを対象に導入潜在量を算出した。送電線が通過する耕作放棄地のグリッドを抽出して、太陽光発電の導入可能量を算出した。 分析の結果、首都圏における耕作放棄地の太陽光発電の賦存量40.8GW、導入潜在量15.1GW、導入可能量5.9GWを明らかにした。さらに、グリッド単位の年積算日射量のデータを用いて、太陽光発電の年間発電賦存量39,234GWh、年間発電潜在量14,676GWh、年間発電可能量5,679GWhを算出した。これらは首都圏における2015年度の電力消費量に対して、13.4%、5.0%、1.9%にそれぞれ相当することがわかった。
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