研究課題/領域番号 |
16K00651
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松井 孝典 大阪大学, 工学研究科, 助教 (30423205)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生可能エネルギー / 多目的最適化 / 知能システム |
研究実績の概要 |
種々の再生可能エネルギー生成量,流通のためのエネルギー技術システム構成,FIT制度による経済性や認可基準など,最適解の導出に付随するパラメータの不確実性が考慮されていない.技術は日進月歩であり,REに関連する諸制度も社会情勢に応じて短期的に変動する.また数理モデル的にもパラメータの挙動により最適解の導出が不安定になる場合があり,政策立案や運用する利害主体とのコミュニケーションの基盤情報として脆弱である. また階層分析法(AHP:Analytic Hierarchy Process)によって複数の評価関数を合成して単目的最適化問題に帰着させてピーク性能を高めるアプローチ,あるいは各目的関数にメンバーシップ関数を特定しmaximin基準を選択してファジィ最適解を導き保守解を得るようなアプローチは,合成関数やメンバーシップ関数の特定,数理的意思決定基準の段階でユーザーに過酷な数理的判断を求めることになり,実用性の面からは問題がある. そこで本年度は,進化計算によって最適解集合の縮約を実行し,満足解の選定過程を支援することを行った.具体的には,エリート非優越ソートアルゴリズム(NSGA-II)を用いてパレートフロント同定型の進化計算アルゴリズムによって設計空間上で実行可能なREミックスの多様な非劣解集合を抽出し,RE利用率・経済収支・風力発電導入率・CO2削減率・バイオマス資源循環率・潜在的生態系影響面積の6次元に写像される非劣解集合を,教師なし機械学習である自己組織化マップ(SOM:Self-Organizing Maps)などにより次元圧縮して可視化することで,各地域のRE供給ポテンシャル下で選択可能なパレート最適解を「ピーク性能の追求型」や「バランス性能重視型」のように,REミックスとその環境・経済性能で類型化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究での主たる達成目標は単目的最適化をベースとしたREROUTESに,「拡張機能Ⅰ:パラメータの不確実性を緩和した多目的最適化機能」,「拡張機能Ⅱ:将来シナリオを感覚的に把握するための想起支援機能」,「拡張機能Ⅲ:将来の環境・社会システムの動態に応じた適応的REミックス支援機能」の3つの機能を最新の人工知能技術群を統合して知能システム化して拡張することとなる. 本年は特に,「拡張機能Ⅰ:パラメータの不確実性を緩和した多目的最適化機能」を中心に,再生可能エネルギー数理モデル自体の改良を行うと共に,NSGA-IIをベースにした多目的最適化の進化計算プログラムを実装した.また「拡張機能Ⅱ:将来シナリオを感覚的に把握するための想起支援機能」については,実際の再生可能エネルギーを導入する自治体等との意見交換を継続し,想起支援を効果的に行うための機能定義を行っている.「拡張機能Ⅲ:将来の環境・社会システムの動態に応じた適応的REミックス支援機能」について,ディープラーニングアルゴリズムの実行環境の整備と,予測・識別タスクの実行のための技術習得を行った.
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今後の研究の推進方策 |
「拡張機能Ⅰ:パラメータの不確実性を緩和した多目的最適化機能」では,多目的ロバスト最適化技術の習得と実装に努める.「拡張機能Ⅱ:将来シナリオを感覚的に把握するための想起支援機能」では優良事例DBのプロトタイプ構築とオントロジー生成を行う予定である. 最後に「拡張機能Ⅲ:将来の環境・社会システムの動態に応じた適応的REミックス支援機能」では,ディープラーニングモデル・階層ベイズモデル等によってバイオマスエネルギーを中心とした高精度な需給予測モデルの開発を試みる.バイオマスエネルギーを中心とした高精度な需給予測モデルについては一部先行して開発を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
モデルの計算規模に応じて、ディープラーニング用のワークステーションに実装するGPUのスペックを検討していたため執行を猶予した.
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次年度使用額の使用計画 |
H29年度にNVIDIA GTX 1080(memory 8GB)程度の仕様のGPUを購入する予定である.
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