昨年度までに、PtUMPS遺伝子ノックアウト後のキュアリング株を対象に、細胞外分泌型のアルカリフォスファターゼ(PtAPase)遺伝子の標的配列を基に、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を行った形質転換珪藻株を取得した。今回はこれらのクローンについて呈色基質X-phosphateを用いた簡便なスクリーニングを利用した欠損株の選抜、PtAPase遺伝子欠損の有無について評価した。さらに、複数のカロテノイドの合成遺伝子を対象にしたCRISPR/Cas9による遺伝子破壊を試みた。 PtAPase遺伝子の標的配列を基にCRISPR/Cas9プラスミドを構築し、これをキュアリングしたPtUmps破壊株に導入して形質転換珪藻株を取得した。このうち任意に23クローンを選抜し、定常期まで液体培養を行った後、培養液を用いて簡易APaseアッセイを行った。その結果、17クローン(74%)において青色の呈色が見られず、PtAPase遺伝子破壊により活性が失われていることが推察された。 次に、本実験系の有効性検証を目的に、カロテノイド合成に関与する遺伝子2種(Pt16586およびPt26422)を対象に、CRISPR/Cas9を用いた遺伝子ノックアウト珪藻株作出を試みた。その結果、選抜培地上に形質転換株と予想されるクローンが出現し、Pt16586においては42株、Pt26422では25株の候補株が得られた。形質転換効率は何れの場合もこれまでと同等(60-70%)であり、本実験系が様々な遺伝子のゲノム改変に適用可能であることが示された。さらに現在、これら遺伝子の二重欠損株の作出を試みている。
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