研究課題/領域番号 |
16K00653
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐々木 壮一 長崎大学, 工学研究科, 助教 (00304965)
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研究分担者 |
山口 朝彦 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (00284711)
馬越 孝道 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30232888)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2020-03-31
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キーワード | 気液平衡データ / 混合液 |
研究実績の概要 |
気液平衡(Vapor Liquid Equilibrium,以下VLE)データとは,気液平衡状態にある物質の温度,圧力,混合物の組織の関係を測定したものである.ランキンサイクルの作動流体であるR245faとタービン潤滑油との混合物の状態方程式を予測することを目的として, VLEデータの測定に必要な実験装置の開発,およびR245faと潤滑油の混合物のVLEデータの測定を行った.試料にはR245faおよび潤滑油(SUNISE P56)が採用された.実験装置は,測定対象となる試料が注入される試験管,試料を注入する平衡セル,試料の温度を一定にするための攪拌装置,恒温槽内の温度を測定する温度計,平衡セル内の圧力を測定する圧力センサ,装置内部の真空引きを行う真空ポンプ,測定データを出力するためのデジタルマルチメータおよび電源から構成されている.恒温槽の温度は温泉水を用いた発電サイクルの作動流体の温度分布域を同じ40℃,60℃,80℃に保ち,平衡セル近くに設置した白金抵抗温度計を使用して求めた.この潤滑油を混合したR245faについて,組成比ごとの沸点圧力を測定した.包含係数を2としたときの測定における拡張不確かさは,最大19%,最小1.0%であった.実験装置の漏れ試験および冷媒単体の測定では,装置の機密および測定結果の誤差はセンサの誤差範囲内に収まった.混合液中に占める潤滑油の割合が小さくなるほど実測値の蒸気圧は高くなること,混合液の温度が高くなるほど蒸気圧が高くなることなどを,実測値のVLEデータに基づいて定量的に示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R245faと潤滑油から構成される混合液のVLEデータの測定を可能にする実験装置を開発した.テストプラントの動力学的特性に関する研究成果を国際会議で発表し,ランキンサイクルの主要構成要素である熱交換機性能の研究成果が英文誌に掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
高精度なVLEデータの測定を目的として,平衡セル内の温度を直接計測することができるように実験装置を改良する.混合液のVLEデータに基づいてテストプラントの熱力学的特性を評価する.これらのランキンサイクルの設計条件に立脚して,タービンと蒸発器の開発に着手する.これらの取り組みは,既存の機械装置の転用ではない,革新的オーガニックランキンサイクルの創出に貢献する.
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次年度使用額が生じた理由 |
VLEデータの測定に必要な実験装置の開発は進んだが,テストプラントの熱交換器性能を十分に試験することができなかった.このため,システムの作動流体,潤滑油などの消耗品費に繰り越しが発生した.平成31年度は,研究計画のシステムの動力学的特性に加えて混合物のVLEデータを考慮したシステム性能を評価するため,熱力学的に設計された蒸発器を新たに購入する.また,最終年度の総合的な研究成果を幅広く公表することを目的として,研究成果を国内学会と国際会議で発表する計画から,二つの国際会議(一つは国内開催)で発表するよう修正する.
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