本研究では、焼却設備から排出される焼却灰を原料に用いて、微細藻類及び水素発酵菌で油分(脂質)と水素を生産するバイオ燃料生産技術の開発を目的として、平成28年度から平成30年度の3年間で研究を行った。 平成28年度は、鶏糞焼却灰を原料に用いて、微細藻類のクロレラ(Chlorella vulgaris)を培養するための焼却灰培地の調製法について検討した。塩酸水溶液に溶解する焼却灰の添加量を調整すると、生育に必要な鉄及び各種元素を含有する焼却灰溶解液が得られ、焼却灰溶解液に窒素源として硝酸カリウムを添加して調製した焼却灰培地はクロレラの培養に適することを明らかにした。 平成29年度は、クロレラの生育と脂質生産において、焼却灰培地に添加する窒素源及び有機性炭素源の種類と濃度の影響について検討した。焼却灰培地にグルコースを添加すると生育速度及び脂質生産速度が大幅に増大し、グルコースと硝酸カリウムの添加濃度の影響を調べて、クロレラの脂質生産に最適な焼却灰培地の組成を明らかにした。 最終年度は、脂質生産に最適な焼却灰培地でクロレラを培養し、脂質を抽出した後の藻体残渣を培地成分に用いて、水素発酵菌(Clostridium beijerinckii)で水素を生産する方法について検討した。脂質抽出後の藻体残渣は水素発酵の培地成分として利用でき、藻体残渣を添加する培地での水素生産に及ぼす他の培地成分、培地pH及び培養温度等の影響を調べて、水素生産に最適な培地条件及び発酵条件を明らかにした。 本研究課題の実施により、有効利用が求められている焼却灰をクロレラの脂質生産のための培地原料に用い、さらに脂質抽出後のクロレラの藻体残渣を水素発酵菌の水素生産のための培地成分に活用し、焼却灰を循環利用して油分と水素のバイオ燃料を生産する方法を開発した。
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