研究課題
2016~2017年度に聞き取り調査を行った世界自然遺産地域(屋久島、白神山地、知床、小笠原諸島)について、テープ起こしをもとに、それぞれの地域で、世界遺産とコミュニティとの関係に関して何が問題となっているかを分析した。1993年に世界遺産に登録された屋久島、白神山地においては、原生林の保護をはじめとする自然保護に重点がおかれてきた一方で、地域コミュニティが育んできた伝統的文化の喪失が課題となっており、自然遺産における文化的価値をどのように位置付け、いかに自然と文化の両立を図るかが課題となっていた。2005年に世界遺産となった知床、2011年に世界遺産となった小笠原諸島では、登録時の課題(知床ではダムの撤去など海と陸との生態系の連続性、小笠原諸島では固有種を脅かす侵略的外来種の駆除や新たな侵入・拡散防止)が引き続き問題となっていたほか、知床では昆布漁をはじめとする人の営みと世界遺産との関係、ヒグマをはじめとする野生生物と人との共存、小笠原諸島では飼い猫をはじめとするペットの適正管理への島民の参加、また両方の地域で国立公園の適正利用のためのビジターコントロールなどの課題がコミュニティの関心事となっていた。また世界遺産管理にあたっては、1993年に登録された屋久島、白神山地では国、県、町村などの行政が中心となっているのに対して、2005年以降に登録された知床、小笠原諸島においては、行政のみならず、観光、農林水産業、自然保護団体など、様々なセクターが参加した会議体が、コミュニティの参加にとって重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
Wildlife Forum
巻: 23 ページ: 26-29