研究課題/領域番号 |
16K00671
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
青木 一益 富山大学, 経済学部, 教授 (60397164)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | サステイナビリティ・トランジション / Multi-level perspective / 権力(関係)概念モデル / システム・イノベーション / ニッチ |
研究実績の概要 |
当初年度である本年度は、研究計画における主要課題の一つである、トランジション理論(transition theories)における権力(関係)(power and power relations)概念をめぐる理論的なモデル構築とその更なる精緻化に取り組むとともに、そこで得られる理論枠組み・分析視座の経験的な援用可能性を探る作業において重要となる、ニッチにおけるイノベーションを志向した実験的な施策がアップスケールを可能にする際のいわゆる「地理的要因(regional assets and endowments)」の有無・可否にかかわる考察に着手した。より具体的には、近年の一連のトランジション研究において提示された重層的視座(MLP:Multi-level perspective)に依拠しつつ、システム変革の非一義的な帰趨にかかわる仮説を導出した上で、わが国の電力消費者を対象としたウェブ・サーベイに基づく検証・分析に取り組んだ。ここでいう検証・分析に際しては、東日本大震災および福島第一原発事故を受け、電力システムの抜本改革、すなわちは、従来の大規模集中型から(より持続可能なシステムとされる)小規模分散型への転換の必要性が謳われていることを念頭に、被災地と非被災地および大規模(中規模)都市と中小・農村地域という判断軸を用いて、計5つの地域類型を設定することで,震災被害の影響や地域資源・リソースの多寡に見る差異が,システム変革に対する電力消費者の選好・認知にいかなる違いをもたらすのかに着目した。分析成果を受け、小規模分散型システムへのトランジションの可能性に展望を得るとともに、その方向性に影響を与え得る政策手法の如何について論考を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主要課題の一つである理論枠組み・分析視座の構築・深化をはかるにあたり、それらの構成要素として何が求められているのかの解明に向けた取組については、概ね計画に沿った進捗を見たものの、それを経験的・実践的に援用・展開するために必要となる思索・論考については、当初想定していた具体的な成果を必ずしも十分には得ることができなかった。システム・イノベーションの創発・定着に欠かせない、ニッチにおける実験的な動態がアップスケール際に不可避となるアクター間の権力関係に基づく相互作用が、いかなる場(arena)あるいはネットワークをめぐる変容・進展の過程において経験的に観察し得るのかは、理論枠組み・分析視座の実践的有用性を問う上で重要なイシューとなるが、この点に関する考察においては、当初計画に照らし、やや遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進においては、既存のトランジション理論の深化をはかるとの観点から、システム・イノベーションの様態やその可否を規定するとされるアクター間の権力関係(power and power relations)をさらに精緻かつ有意味に概念化・モデル化する中において、当該アクターによって動員される資源の多寡やその作用・効用の有無や可否を左右するアクター間ネットワークの動態のあり方をいかに捕捉・可視化し、かつ、それらイシューをめぐる理解を基にしつつ、経験的検証にふすに耐え得るだけの仮説群の導出をいかにしてはかるのか、という課題に取り組むこととする。また、ここでの成果を受け、研究計画に記した諸地域での電力システムのスマート化事業をめぐる実証実験の取り組みを分析素材としたケーススタディに着手することにより、そこで得られる経験的な知見を上記で述べた研究課題に再帰的に利活用することで、求められる理論と実践との相互往来にも意を払うこととする。
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