研究課題/領域番号 |
16K00675
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 謙太郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (30344097)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然公園 / 環境経済評価 / 入域料 / フリーライド |
研究実績の概要 |
平成28年度は、屋久島における赤外線カウンターの時系列データの比較分析、そして富士山保全協力金への支払意志に関する順序プロビット分析を行い、研究成果を学会報告するとともに学会誌に登載した。 平成28年度は、主要な調査対象地域である屋久島において入域料に関する大きな制度改革が実施され、強制力を持たせた入域料の収受が開始された。そのため、今後の研究期間における比較研究の基礎資料として用いるため、平成18年度以降10年間のデータ収集と分析を先行実施した。今後、旧制度から新制度への変更が周知されるに従い、その影響が訪問者数や訪問者行動に影響すると予想される。赤外線カウンターの日別データ等を分析した結果、火山噴火等の災害の風評被害、そして近隣の代替的観光地におけるLCC就航等の影響が明らかとなった。 次に、過去に実施したインタ-ネット社会調査のデータにおいて、富士山を対象としたデータのみを取り出し、順序プロビット分析による解析を行った。富士山保全協力金の金額である1,000円の回収率は約50%であり、フリーライダーが発生している。回収率の向上をはかるには、より多くの人件費が必要であり、費用効率性が低下する。そのため、登山者を含む一般市民が、入山料の金額の妥当性と支払意志の観点からどのように評価しているかを検証することが重要である。順序プロビット分析を用いて分析を行った結果、妥当性と支払意志への回答に与える独立変数として、訪問経験や入山料の使途に関する変数が強く影響していることが明らかとなった。 また、奄美大島や沖縄県北部等における実態調査に基づく、入域料徴収の可能性について質的調査を行い、今後の研究対象地選択を行うための予備的検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初、本研究課題を開始する以前より蓄積してきた赤外線カウンターデータ及びアンケート調査データの予備的解析を行うとともに、社会調査の候補地選択を主に行う計画であった。しかしながら、平成26年度と27年度において、屋久島の観光客動向に大きな変化があり、その要因が既存の統計データ及び赤外線カウンターデータの組み合わせにより接近可能であることが検証できた。当初は、予備的解析にとどまると想定された研究アプローチであったが、学会誌に掲載される分析結果を得たことは、当初の予想を超える進捗状況である。 また、過去に実施したアンケート調査データの中から、未解析であった富士山登山に関するデータについて、現地調査を踏まえた新たな計量分析を実施することができた。その結果、妥当性と支払意志という観点から、順序プロビット分析により、回答者の行動と意識の乖離を明らかにする手がかりが得られ、今後の調査に向けての研究課題が明らかとなった。 それらを踏まえて、年度末に富士山登山者を対象とするアンケート調査を実施できた。新規性及び信頼性の高いデータを得ることができ、今後の研究成果蓄積に向けて重要な進歩があったと判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策については以下の2点にまとめられる。1点目は、屋久島における制度変更が入域料収入とその使途に与える影響の定性的分析である。それらを踏まえた上で、赤外線カウンターデータの継続的分析、そしてアンケート調査等による分析を追加的に実施する計画である。 また、富士山登山に関するインターネットアンケート調査データを収集したため、様々な角度から計量分析を施し、フリーライドの発生する要因を明らかにする。それらを踏まえた上で、平成29年度と平成30年度に追加的調査を実施する計画である。
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