平成28年度は、屋久島における赤外線カウンターの時系列データの比較分析、そして富士山保全協力金への支払意志に関する順序プロビット分析を行った。その結果、火山噴火等の災害の風評被害と代替観光地の影響が明らかとなった。富士山について、順序プロビット分析を用いて分析を行った結果、妥当性と支払意志への回答に与える要因として、訪問経験や入山料の使途が影響していることが明らかとなった。 平成29年度は、日本と中国における調査及び分析を行った。その結果、入域料課金システム構築時の強制性が、制度設計に重要な要素であることが明らかとなった。富士山を対象としたベスト・ワースト・スケーリング評価において、任意性と強制性という2種類の仮想シナリオを用いた実験を行い、強制性のある入山料では、入山料の使途が個人に直接還元される場合の評価額が高かった。訪日経験のある中国人への調査結果からも、適切な入場料とサービスの対価として国立公園整備を行うことの重要性が明らかとなった 平成30年度は、徴収率向上と徴収費用に相関があり、高徴収率を達成するには限界費用増加が顕著であるため、強制性の高い制度への移行を関係自治体等に提言し、社会実装へ向けた研究を行った。強制性の高い入山料制度の導入が各地で検討されることとなった。屋久島では、強制性の高い入域料が導入された後、不正な資金管理の実態も表面化した。自然公園を有する自治体における資金管理と予算使途が、今後の入域料政策の課題となることが明らかとなった。また、中国及びインドネシアの世界遺産等における現地調査からは、フリーアクセス可能な湖沼等の観光地における入域料徴収制度の制約条件に関する知見が得られた。自然公園と入域料は、世界各国の共通課題であるが、フリーアクセス、徴収費用、資金管理、消費者意識に与える使途の影響等が、計量分析及びヒアリング等から明らかとなった。
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