研究課題/領域番号 |
16K00679
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
伊藤 康 千葉商科大学, 人間社会学部, 教授 (10262388)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 原子力発電 / スウェーデン / 政策決定プロセス / エネルギー政策 / 技術政策 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、8月にスウェーデン現地調査を行った。1980年の原発廃棄国民投票後に、政府部内でどのような議論が行われたのかを詳細に検討するために、王立図書館、議会図書館で意思決定プロセスに関連する資料の発掘に努めた。また、王立工科大学の原子力工学研究者にヒアリングを行い、1987年の「原子力活動法改定」の影響が大きかったこと、原発廃棄決定後に原子力工学志望の学生が大幅に減少した(留学生については維持)等の証言をえることができた。ただし、原子力工学専攻学生数の推移等のデータについては、提供して頂けるとのことであったが、現在に至るまで入手できていない。 これまでの調査・研究の結果については、2017年12月21日に京都大学大学院経済学研究科で開催された環境経済学セミナーにおいて、「国民投票後のスウェーデンのエネルギー政策-脱原発の施策は十分だったのか」というタイトルで報告を行った(出張旅費は先方が支出)。 また、政府の再生可能エネルギー技術の開発・普及に対して行った助成政策の効果を定量的に把握するために、スウェーデン環境保護庁所有のスウェーデン語資料に関して、翻訳を依頼し、どの程度新技術開発・普及のためのプロジェクトが構想・実施されたのか把握につとめた。これについては、平成29年度で新技術を含んだプロジェクトの概要が把握できたので、今年度は定量分析を実施可能な状態になった。 関連した研究の成果として、「環境政策と技術-適切な制御は可能か?」『一橋経済学』11巻1号,2017年7月、及び”The Cost Effectiveness of Radioactive Decontamination Policy”in Tsujinaka et al. (2018) Aftermath, Trans Pacific Press が刊行された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
必ずしも政策決定プロセスに関する資料を十分に入手できていない。また、スウェーデン語資料の翻訳に、予想以上に時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
資料の入手は必ずしも十分ではなかったが、平成30年度が最終年度なので、更なる資料収集を続けながら、成果を発表(できる限り英文化)する。 まず政策形成プロセスに関して、これまでに収集した1980年の国民投票後のエネルギー政策・技術政策に関する資料、原子力工学研究者等に対して行ったヒアリングから、原発廃棄の決定により予想される問題(廃炉関連技術の停滞の可能性等)について、スウェーデン政府は必ずしも十分な対策を行ってこなかったと推察されること、しかし原発関連企業は2010年までの原発廃棄の実現性について疑問を持っていた、スウェーデン政府の原発関連研究開発投資が減少したとしても外国の技術を利用すればよいと考えていたために、それを重大な問題とは捉えていなかったと推察できること等について論じる。 定量分析としては、欧州特許庁(EPO)の特許データを用いて、技術開発活動に与えた影響に関する検討を行う。既に、スウェーデンにおける原子力発電関連技術に関する特許出願動向についてはデータを得ているが、検索結果がやや不安定などで、更に精査した上で分析を行う予定である。また、1990年代以降の再生可能エネルギー技術普及のための技術開発・普及のための助成政策について、翻訳を行った環境保護庁のスウェーデン語資料等に基づき、漸進的な技術普及効果はあったものの、新技術の開発・普及効果は大きくなかったことを定量的に明らかにする。 内容に関して詳細なコメントを頂けるセミナーでの報告を複数回行いながら、論文執筆を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に予定していたスウェーデン現地調査が行えなかったので、30万円ほどの繰り越しがあり、その分を平成29年度に使用する予定であった。しかし、平成29年度は現地調査を行ったものの、当初の予定より短い期間だったので、平成28年度からの繰り越し分を全て使うには至らなかったため。平成30年度は、その分をセミナー、学会等での報告のための出張旅費、英文校閲等への謝金に充てる予定である。
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