研究課題/領域番号 |
16K00680
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
岡崎 雄太 上智大学, 地球環境学研究科, 准教授 (00772419)
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研究分担者 |
李 志東 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (80272871)
森 晶寿 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (30293814)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 排出枠取引 / 二酸化炭素排出削減効果 |
研究実績の概要 |
(A)排出枠取引市場を通じた削減効果の計量経済分析:パイロット事業7都市の市場を対象に、取引対象となる温室効果ガスの種類、対象事業者の範囲、総排出枠の設定と対象事業者への配分、測定・報告・認証体制の整備、罰則規定、対象事業者以外の市場参加の有無、達成状況等に関する基礎データ、全国31地域の5カ年計画目標達成状況データを整備した。これらを用い、7市場と31地域を対象にGDP当たりCO2排出量の削減効果に関するパネルデータ分析を行った結果、排出枠取引市場の導入が排出原単位削減に寄与することが分かった。また、GDP当たりエネルギー消費量の削減、石炭消費比率の低減も共通削減要因として機能することも確認できた。一方、一人当たりGDPと地域特性の影響は、7市場モデルで確認できたが、31地域モデルでは確認できず、その理由に関する調査が必要と思われる。 (B)排出枠取引制度の対象企業の排出削減行動の変化の分析:7都市のパイロット事業の対象日系企業のリストを更新するとともに、上海排出権取引所、JETRO上海事務所、日系企業、中国政府関係者及び研究者へのインタビュー調査を実施した。研究成果の一部は、環境省カーボンプライシング検討会の資料として引用されたほか、主要紙で報道された。 (C)他の政策手段の効果の強化を通じた排出削減効果の評価:社会技術システムの重層的・動学的移行モデルを用いて分析を行った結果、現時点での中国は,石炭産業やそれを保護する地方政府の圧力等により、FIT等の再エネ普及政策の普及効果には限界があることを明らかにし、その結果を英文学術誌で公表した。同時に、パイロット事業実施地域は、ガス供給システムの整備や他地域での水力発電開発とその移入等、低炭素代替エネルギーの供給能力を拡大しており、排出枠取引導入がエネルギー代替を促す仕組みを整備していることを明らかにし、国内学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の研究成果の概要に示したとおり、当初の研究計画におおむね沿って研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
(A)排出枠取引市場を通じた削減効果の計量経済分析:排出枠取引市場による削減効果が既に確認できたため、今後の課題は、取引価格形成メカニズムの解明である。全国取引市場導入に関する制度設計の詳細を調査しながら、取引価格への影響要因を特定する。 (B)排出枠取引制度の対象企業の排出削減行動の変化の分析:昨年度までの調査結果を踏まえて、現地日系企業に対するアンケート調査を実施し、排出枠取引パイロット事業による企業の排出削減行動への影響を明らかにする。 (C)他の政策手段の効果の強化を通じた排出削減効果の評価:排出枠取引パイロット事業実施地域のCO2削減の要因分析を、比較可能な発電部門に限定した上で、韓国と比較分析を行う。その上で、パイロット事業実施地域で、排出枠取引対象部門と非対象部門の削減の相違とその要因を、定量的・定性的に分析を行う。これらの分析結果の一部を、環境経済学世界大会で報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)インターネット上で公表されている資料を活用した情報収集、出張経費の節減などにより、当初の想定以上に効率的に研究を進めることができたため。 (使用計画)引き続き効率的な研究の実施に努めつつ、次年度使用額を活用した調査の充実を図るとともに、中国からの専門家の招へいを検討する。
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備考 |
報道採録:「中国、排出量取引全国導入 電力業界、他業種に拡大も」共同通信(2017年12月14日) "China, Japan, Korea carbon market links resurface as talks set for next week"Carbon Pulse(2017年12月15日) 「中国、脱石炭へ排出量取引 ガス転換を後押し」日本経済新聞(2017年12月19日) 他
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