中国の7市場と31地域を対象にGDP当たりCO2排出量の削減効果に関するパネルデータ分析を行った結果、排出枠取引市場の導入が排出原単位削減に寄与することが分かった。また、中国が世界に先駆けて国家レベルで導入を進めている再生可能エネルギー電力消費目標規制とグリーン証書取引制度、電気自動車等新エネルギー自動車販売目標規制とクレジット取引制度についても分析を行い、これら広義のカーボンプライシング制度も炭素削減に寄与するとの結論を得た。 また、7都市のパイロット事業の政策動向に関する資料、研究論文等を収集分析するとともに、対象日系企業のリストを更新し約120社を特定した。このうち5社を対象に詳細調査を行い、各社の生産量、二酸化炭素排出量の変化とその要因、目標達成状況と排出枠売買の実績、制度対応の経済的負担、排出枠価格の投資判断への影響と今後の見通し、削減対策を検討する上で影響のある政策、制度導入前後の対策の導入状況、社内の体制、希望する支援策等を把握した。 さらに、排出枠取引制度を導入した2省4都市の排出枠取引制度導入前後のエネルギー構造及びCO2排出の変化を要素要因分解分析法(Logarithmic Mean Divisia Index: LMDI)を用いて分析した結果、非実施地域と比較して、排出原単位削減に加え、エネルギー構造転換においても有意な効果が見られることを明らかにするとともに、その要因を明らかにした。この分析結果について環境経済学世界大会で口頭報告を行った。そこで受けたコメントを踏まえてドラフトを改定した上で査読付英文学術雑誌に投稿し、査読結果を待っている。また、昨年度口頭報告を行った中国におけるエネルギー安全保障と気候変動政策の統合方式とその帰結に関する分析は、2018年7月にRoutledgeから出版した書籍の1つの章として公表された。
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