研究課題/領域番号 |
16K00681
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
織 朱實 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (70367267)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | リスクコミュニケーション / 順応的ガバナンス / 侵略的外来種 / 世界自然遺産 / 住民参加 |
研究実績の概要 |
1)論点の整理、手法の検討:小笠原諸島におけるネズミ対策の合意形成のありかたについて、平成26年度空中散布事業が廃止にいたった経緯について、関係者島民インタビューにより不信感の要素、合意形成プロセスの問題点を抽出し、住民合意プロセスについての法的課題を明らかにした。これらの分析の結果については、第20回環境法政策学会のシンポジウム「生物多様性と持続可能性」のパネルディスカッションでコメントのかたちで発表を行った。 2)IUCNへの参加(情報収集、知見の共有):2016年度IUCN国際大会(オアフ島)における「侵略的外来種対策」のワークショップに3日間参加し、パラオ、グアム島等の小笠原と同様の海洋島における侵略的外来種対策の現場における課題について、研究者による意見交換を行った。ここでは、経済的インセンティブを使用した方法なども議論された。また、離島における外来種対策ガイドライン改定の議論に参加し、小笠原への適用についても考察を行った。 3)ハワイ島における侵略的外来種対策およびリスクコミュニケ―ションの事例収集 ハワイ島の海鳥類繁殖地におけるわなによる継続的な低密度化事例や、自然保全地域の出のマングース対策、化学的防除についてのリスクコミュニケーション事例について、現地の複数のNGOやIsland Conservation、US Fish and Wildlife Service等の機関との意見交換を、シンポジウムの形態で実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小笠原父島においては、2回にわたり科学的防除に関する漁業関係者、学校関係者、議員、観光業者等の意見をヒアリングし、一度挫折した殺鼠剤空中散布に対するフォローアップを行った。また、オアフ島でのIUCNの会議に参加することにより太平洋諸国の外来種対策事業に関わる研究者の現場からの課題を効率的に収集することができただけでなく、会議の参加により今後の課題につながるネットワークが構築できた意義は大きかった。ハワイ島では、Hawaii Field Station(研究機関)が中心になり、外来種対策の専門家および住民への外来種の普及活動を行っているNGOも参加し,化学的防除とそのリスクコミュニケーションについてハワイ島での取組と小笠原での取組について意見交換を行った。情報を取得するだけでなく、小笠原の課題についても理解してもらえたことは今後の研究を国際的に展開する観点からも意義があった。
|
今後の研究の推進方策 |
29年・30年度の調査計画 28年度のハワイ・小笠原調査により、世界自然遺産地域における科学的知見と住民参加のバランスをどのように図っていくのか方向性を見極める必要があることが明らかになった。そこで、侵略的外来種対策について、早くからも問題に直面し、取り組んできたガラパコス諸島の実態を29年度に視察にいき、その後30年度には第二世代の殺鼠剤を使用し効果ニュージランドへの現地視察を行うものとする。ガラパコス諸島では、観光による経済基盤の確立と外来種の侵略をどう防止していくのか、観光客に対する情報提供、リスクコミュニケーションのあり方に関する情報を収集することにより観光客が増加する小笠原における対策を検討するための参考とする。一方、根絶が成功したニュージーランドではその後の再侵入を防止するための住民との協働事業が注目すべき事例であり、ニュージーランド 北島北部のイースタンベイでのProject Island Song、ニュージーランド シェークスピア保護区でのエリア防除駆除事例の収集を行う。こうした海外事例調査および小笠原の事例分析を行い「小笠原諸島ネズミ対策におけるリスクコミュニケーション、住民合意のありかた」についての提言としてまとめる。
|