研究課題/領域番号 |
16K00681
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
織 朱實 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (70367267)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 外来種対策 / 住民参加 / 世界遺産 / inter-disciplinary / サスティナブルツーリズム |
研究実績の概要 |
1)論点の整理 小笠原諸島におけるネズミプロジェクトの問題点について、昨年度の基礎調査をベースにさらに今後のプロジェクトの進め方をふくめ、プロジェクトの請負事業者である自然研究所へのヒアリング、環境省へのヒアリング、NGO野生生物研究所のヒアリング等によりその後の課題についてフォローアップ調査を行った。これらの論点整理、さらに今後のあり方については小笠原父島で、島民勉強会のかたちで発表を行った(2017年12月16日世界遺産センターにて「エコツーリズムからサスティナブルツーリズムへの課題」)。 2)ガラパゴス諸島への現地調査(情報収集、知見の共有) ガラパゴス諸島で現地の固有種がどのように保護されているのか、またエコツーリズムがどのように実施されているのか調査のために、ガラパゴス(イザベル島、サントクリス島)の保護地域を現地ローカルエコガイドとともに視察を行った。さらに、観光協会、ダーウィン研究所へガラパゴス諸島がいかに危機遺産から脱したのかその経緯についてヒアリングを行った。ダーウィン研究所主催のエクアドル環境関係者を集めた「この20年の経緯、これから科学が重点的にガラパゴス自然保全のために行わなければならない課題」に関するワークショップに参加し、小笠原諸島との課題共有を行った。 3)コロンビアハベルニア大学へのヒアリング コロンビアココ島における外来種対策を2年間レンジャーとともに実施してきたJuan Ricardo Gómez 教授へのインタビュー、アマゾン流域で現地市民参加型の普及啓発活動を行っているNGO Tropenbosへのヒアリングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の基礎調査をベースに、小笠原と同じように外来種問題に苦しみ、様々な市民参加手法を検討してきたガラパゴス諸島の対策を関係者、研究機関にヒアリングし、情報を共有できたことは大きな意義があった。ガラパゴス諸島において住民参加型の管理計画プロセスが策定されたものの政治的な問題からとん挫し、現在のツーリズムのあり方自体が変更を強いられているという現状は小笠原への示唆にも富むものである。また、科学者が中心となって策定されている米アマゾンでの市民参加の取り組み、ココ島での外来種対策から学際的協力の重要性として、inter-disciplinaryな取組という重要なキーワード示された。新しいアプローチ、視点についてヒントが得られたこと、および南米でのネットワークが構築できたことが2年目の一番大きな成果であった。一方で、海外調査の準備等に時間を費やし、研究成果のまとめ外部への発信が十分にできなかったことが大きな反省点である。
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今後の研究の推進方策 |
1年目、2年目の調査で構築されたネットワークを、小笠原に知見を還元するためのまとめを行っていく。具体的には、6月にコロンビアハベルニア大学の教授を招いた小規模な勉強会を小笠原関係者の参加のもとで開催する。ここにおいて、Sustainable Irland を基本コンセプトに、サスティナブルツーリズム等新しいSDGsの動きも視野に入れた総合的外来種対策への課題および提言を議論していく。そのために、関係者へのヒアリングをさらに実施していく。当初、外来種対策として効果的な第二世代殺鼠剤を使用しているニュージランドの事例を3年目には調査を行う予定であったが、小笠原関係者へのヒアリングから先進的な手法への取組への移行に対しては抵抗が強いことが明らかになったことから、小笠原と類似の問題を抱えているガラパゴスおよび現地参加型の教育普及活動、新しいスタイルのエコツーリズムを模索しているアマゾン流域の取組からの知見を、小笠原の課題に取組むため、また今後の発展形態としてガラパゴスと小笠原の協力関係についての議論を行うために再度ガラパゴス、コロンビアへの視察を行い、これら具体的に議論されてきた内容を「小笠原諸島ネズミ対策におけるリスクコミュニケーション、住民合意のありかた」としての提言を最後の研究年のまとめとして行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回、予定していた小笠原諸島への現地調査が日程的に難しく実施しなかったこと、および南米の旅費が見積もりより低額で抑えられたためである。
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